第2185冊目 ユマニチュード入門 本田 美和子 (著), ロゼット マレスコッティ (著), イヴ ジネスト (著)


ユマニチュード入門

ユマニチュード入門

  • ケアを受ける人は本当に見てもらっているか?


病気や障害によって他者に頼らざるをえない状態になった人の場合、この「見る・見られる」という関係はどのようになっていくでしょうか?


ここで、認知症で寝たきりとなったグレゴリーさんという高齢者を3日間観察して得た結果を紹介します。


3日間の調査期間中、部屋にやってきた人からの視線の投げかけは、0.5秒未満が9回あっただけでした。ユマニチュードでは、相手を「見る」ためには、0.5秒以上のアイコンタクトが必要だとされています。グレゴリーさんの部屋には3日間の合計で、医師が7分間、看護師が12分間それぞれ来訪していましたが、彼らとグレゴリーさんとのアイコンタクトはともに0秒でした。


つまり、「あなたの存在を認めていますよ」というメッセージを発するための「見る」という行為が、医師からも看護師からも行われていなかった、という結果になりました。人としても存在とその尊厳を確認するための行為――第2の誕生をもたらす「見る」行為――は、グレゴリーさんに対し3日間で一度も実施されていなかったのです。