第2177冊目 ユマニチュード入門 本田 美和子 (著), ロゼット マレスコッティ (著), イヴ ジネスト (著)


ユマニチュード入門

ユマニチュード入門

  • ケアの場での「触れる」


このように「触れる」こともまたポジティブとネガティブという2つの側面をもちますが、ケアの現場ではもうひとつ、当人にとって「不快だけど、触れられることを受け入れなければならない」という局面が出てきます。たとえば婦人科の診察や歯科の治療です。不快ではあるが自分には必要であるという合意のうえで行われる行為がもたらす触れ方です。


ケアの場面でいえば点滴やおむつ交換などがそれにあたりますが、そのときわたしたちは、ケアを受ける人にどのように触れているでしょうか。


認知機能が低下して点滴の理由が理解できない人には動かないように腕を押さえて点滴を入れる、おむつ交換の必要性が理解できない人には足を強引に広げておむつ交換する、これはエアを行うために必要な触れ方なのだと、ためらいなく行っているかもしれません。


しかし、自分と周囲の状況が理解できない人にとって、これは恐怖や苦痛でしかありません。ケアを行う人が「不快はともなうが、必要な行為である」と考えて行う触れ方が、ケアを受ける人にとっては単に「攻撃的な触れ方」になっているのです。これがケアをする人が陥りやすい落とし穴です。


他者に依存しケアが必要になった人は、快・不快の情動を頼りに生きています。だからこそ、わたしたちはプロフェッショナルとして、意識的に「広く、優しく、ゆっくり」触れる必要があります。