第2163冊目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • 上司にも心をこめてフィードバックせよ


あるプロジェクトが終わったあとに、上司が部下に対して、仕事ぶりや良かった点、改善点などをフィードバックをするのは当然のことです。


僕の最初の職場では、それが終わると、逆に部下が上司の通信簿をつけるということをやっていました。部下が上司を評価する「アップワード・フィードバック」に真摯に耳を傾けるマネージャーこそが優秀で、それができない者はマネージャー失格だ。外資系企業にもそういった風土があったのです。


これを日本的カルチャーの企業でやろうとしても、これまではなかなか難しい側面がありました。器の小さいマネージャーにかかると、聞く耳すら持ってもらえません。


お客さまのところに上司と同行して、上司とお客さまの会話を横に座って客観的に聞く機会がいずれあると思います。


「いきなりその話をしないほうがいいのに……」


「もっとこんなふうに説明したほうがわかりやすいのに……」


上司に対して、失礼ながらそんあふうに感じることもあると思います。とはいえ、なかなかそんなことを直接言う勇気は持てないかもしれません。


会社での年次が上がるにつれて、新人のころのように面と向かって指導してくれる人は少なくなってきます。上司にフィードバックを送るという行為は、上司にとって本来はとてもいいことだと思うのです。


事実を伝えることは、酷なように見えて、実は相手のためになるのです。フィードバックをする自分のほうが優れているわけではないので、無理をしてまで上司に伝える必要はないかもしれません。残念ながら受け容れるだけの器がない人には、伝わらないのも事実です。


しかし、上司が間違ったことを言って、そのことに本人が気づいていない場合、うやむやにすることなく指摘する人のほうが信頼されると僕は思います。上司からだと迎合する人よりも、はっきりと反対してくれる人のほうが感謝されると思います。僕だったら、こういう若手は大切にしたいと思います。


若くしてそういう指摘ができる人は、本当に立派な人からは正当に評価されるものです。生意気なようでも、正しいことを言える若者は、むしろしっかりしているという印象を持たれるはずです。


上司へのフィードバックは、確かに伝え方に配慮が必要なところはあります。しかしながら、本当に大事な先輩には言ってあげてください。一緒に仕事をする上司の成熟を心から願えばこそ、気づいたことを言うのです。あなたの心が伝われば、上司も先輩も感謝してくれるはずです。

「あんな言い方をしちゃダメっすよ」


それこそ、こんな言い方をしてしまっては素直に聞いてもらえません。


「間違っているかもしれませんが、気づいたこと言ってもよろいしでしょうか。お客さまに商品のお話をされたあと、先方がちょっと困った顔をされたように見えました。おそらく、話の内容を十分に理解されていなかったのではないでしょうか。もしかしたら、あの部分はもう少し詳しく説明したほうが良かったのかもしれないと思いました」


「いきなり企画の話をされていましたけど、横で見ていましたら、お客さまがちょっとびっくりしておられたようです。最初に、こういう話をしておいたほうがいいかもしれないですね……」


言い回しに細心の注意を払って、穏やかに伝えるべきでしょう。