第2162冊目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • 50点で構わないから早く出せ


仕事に慣れていない段階では、どうしても100点満点の成果物を出そうと考えてしまいがちです。


もちろん、100点を目指すのは素晴らしいことです。でも、そのためには1ヵ月をかけるのであれば、1週間で50点のものを出したほうがいい。50点の仕事に赤ペンを入れてもらい、アップグレードしていけばいいのです。


ビジネスの現場は、誰の助けも借りず、何も見てはいけない学校の試験とは違います。人の力を使うことは悪ではないのです。求められるのは、良い成果を出すこと、それにスピードです。すべてのリソースを総動員して、より良いアウトプットを1秒でも早く出すことを心がけてください。


リソースは資料や情報だけではありません。上司や先輩や仲間など、多くの人からのアドバイスも含まれています。この「50点で構わないから早く出せ」というテーマの趣旨は、上司や先輩の力をうまく使い、総力戦で仕事を進めていってほしいということなのです。


「こんな頻繁に俺のところに来るやつはいない」


ボストン・コンサルティング・グループに入社したばかりのころ、当時のマネージャーに言われた言葉です。ほかの人たちは、ある程度完成させるま仕事を抱え込んでいました。


「もう少し質の高いレポートに仕上げてから持っていこう」
「中途半端な段階で持って行くと、上司から怒られるかなあ」


僕にはそういった遠慮する気持ちは、まったくありませんでした。むしろ怖い上司だからこそ多くを学べると考えたのです。自分でできる範囲に仕上げたら、できるだけ早く見てもらったほうがプラスになると考えました。



同じようなことは、リップルウッド・ホールディングス時代の上司にも言われます。彼は、東京海上から転職してきた人物です。


東京海上に入社するようなエリートは、レポートに赤ペンを入れると嫌がる。ところが、岩瀬は真っ赤になって帰ってくると喜ぶ」


仕事によっては、調べたから聞きに行ったほうがいいものがあります。もちろん自分でできる最低限のことは必ずやってください。そのうえで、少し行き詰まってしまい、ここから先は上司の助言をもらっったほうが早く前に進むと思ったら、すぐに相談すべきです。


仕事を抱え込んだ末、締めきり直前に提出したものが誤った方向に進んでいたどうなるでしょう。方向転換は、早ければ早いほどいのです。


上司が忙しそうだから相談しにくいという遠慮は必要ありません。上司の仕事というのは、部下の力を引き出してより良い成果を上げることだからです。忙しいから部下の相手はできないという言い訳は成り立ちません。


上司に配慮したいのであれば、5分だけでもいいのです。重要なポイントだけを示し「この部分につまずいています」と相談してください。あるいは「その点は悩まなくてもいいよ。むしろこっちに力を入れてくれ」という助言を得られるかもしれません。それだけでも、仕事の進め方はまったく変わってきます。


この点は、一つ目の原則「頼まれたことは、必ずやり切る」につながります。抱え込んだうえに仕上げが見当違いの方向に進んでいたら、やりきったことにはならないからです。


勇気を出して50点の仕事を提出してください。提出をゴールと考えるのではなく、最初のフィードバックをもらう機会という気持ちでいればいいのです。


自分の仕事に対してフィードバックを早く頻繁にもらうことが、より早い成長につながると僕は確信しています。


プレゼンテーションが上手になりたいのなら、「プレゼンテーション術」という講義を2時間聴いてもあまり意味がありません。自分でやったプレゼンテーションを人に見てもらい、改善すべき点を指摘してもらったほうが、よほど効果的です。


成長の近道は、実際にやってみることです。そして、やったことを直してもらうのです。その経験を可能な限り短いサイクルで回し、自分の中には多くの経験値(経験知)のストックを増やせるかという点が、成長の鍵になってくると思います。