第2145冊目 スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル (著), 神崎 朗子 (翻訳)


スタンフォードの自分を変える教室

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  • 「10分待つ」と何が起こるか?


欲しい物のために10分待つなんて、たいしたことじゃないと思うかもしれませんが、神経科学者らの発見によれば、たったそれだけのことで、報酬に対する脳の受け止め方は大きく変わることがわかりました。


目先の満足を味わうために10分待たなければならない場合、脳はそれを先の報酬として解釈します。すると、報酬への期待がそれほど起こらないため、目先の快楽に飛びつくのに必要な、強烈な生物的反応も起きません。たとえば、10分待たなければ食べられないクッキーと、減量という長期的な報酬を比較しても、脳は「すぐ手に入る報酬」と比較したときのようなバランスを欠いた判断はしません。目先の快楽といっても、ほんとうに「すぐに」味わえるものでなければ、脳を乗っ取ってあなたの優先順位を覆すようなことはできないのです。


脳を落ち着かせて賢明な判断をさせるためには、どんな誘惑に対しても必ず10分間は辛抱して待つようにします。もし、10分経ってもまだ欲しければ、手に入れてもよいでしょう。


しかし10分待っているあいだに、誘惑に打ち勝ったあかつきに待っている長期的な報酬を思い描いてください。できれば、誘惑になるものとは物理的に距離を置きましょう。(あるいは、見ないようにします)。


もしあなたの意志力のチャレンジが「やる力」を必要とするものだとしても、この10分ルールを利用して、先延ばしにしたい誘惑に打ち勝つことができます。つまり、逆さまにして「10分経ったらやめてもよい」というルールにするのです。がんばって10分続けたら、やめてもよいことにしましょう。けれども、いったんやり始めると、たいていは続けたくなるものです。