第2130冊目 できる人の仕事のしかた リチャード・テンプラー (著)


できる人の仕事のしかた

できる人の仕事のしかた

  • なりたい自分を決める


なりたい自分を決めるというのは、俳優が役を選び、台本を覚えるのに似ている。それは自分がどんな人物になるかを決めることだからだ。ここで何の戦略も持たなければ、あなたは負け犬の役を演じることになってしまう。


なりたい自分をはっきり決められたら、オフィスでぼんやりしている人も、うわさ話ばかりしている人も、同僚に対して冷酷な人も、今よりずっと減るだろう。それに、もっといい人になれるはずだ。


理想の自分の姿について、深く考える人はあまり多くはないが、これは強力な武器になるのだ。


いい人になる努力をしても、絶対に罰は当たらない。自ら進んで嫌われ者になりたい人などいないはずだが、「どこから見ても完璧な悪者で、できるだけたくさんの人を陥れ、すべての人から嫌われ、とにかくいけ好かない人物」を目指しているような人を、私はたくさん知っている。


かつて一緒に仕事をしたある経営幹部は、職場に到着すると、まずはオフィスを歩き回って、相手かまわず叱りつけてから、自分のオフィスに入っていった。そしてコーヒーを飲み、三〇分ほどのんびりしてから、再び部下たちが働く場所に行くと、今度は猫なで声でみんなに優しく話しかけるのだ。


なぜそんなことをするのかと尋ねたところ、彼はこう答えた。


「緊張感を持たせるためだよ。部下は安心させたらダメなんだ」


この上司は、仕事はできるかもしれないが、心底嫌われていていた。ほとんどの人から恐れられ、まったく尊敬されていなかった。


彼は、たしかに成功者かもしれないが、本当に夜ぐっすり眠れていたのだろうか。いつか、こんな自分に耐えられなくなるに違いない。これは悪い例の典型だろう。