第2071冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • なだめ行動の種類


なだめ行動は、さまざまな形で現れる。私たちはストレスが感じると、首をそっと撫でたり、顔をさすったり、髪の毛をもてあそんだりする。本人は無意識なのに、脳が「今すぐ、なだめて」というメッセージを出すから、ただちに手が反応し、自分を快適な状態に戻す行動を起こしているにすぎない。口の中から舌先で頬や唇をこすって気を静めることもあるし、頬をふくらませながらゆっくり息を吐き出して、自分を落ち着けることもある。ストレスを感じた人が喫煙者なら、たばこを吸う量が増える。ガムを噛む習慣があるなら、噛む速度が上がる。こうしたなだめ行動はすべて、脳の同じ要求を満たすものだ。脳は体の神経の末端を刺激する行動を起こさせ、それによって脳内に落ち着きをもたらすエンドフィンを分泌させて、脳の興奮を抑えようとしている。


この本の目的に沿って考えると、負の刺激(たとえば、難しい質問、戸惑うような状況、あるいは何かを見たり聞いたり考えたりしたためのストレス)に応じて顔、頭、首、肩、腕、手、脚に触れるのは、すべて、なだめ行動とみなすことができる。こうして体の一部を撫でてみても、問題は解決しないが、冷静さを保つのには役立つ。そのような行動は自分自身をなだめていることになる。男性は顔に触る場合が多く、女性は、首、衣類、装飾品、腕、髪の毛に触れることが多い。


なだめ行動は人それぞれの好みによって違い、ガムを噛む、たばこを吸う、たくさん食べる、唇をなめる、頬をこする。顔をさする、もの(ペン、鉛筆、口紅、腕時計)をもてあそぶ、髪の毛を引っぱる、腕を掻く、などの行動が、その人のクセになって現れる。ときにはもっとさりげないもので、シャツの前で手を払う、ネクタイを直すなどのしぐさもある。身だしなみを整えているだけに見えるかもしれないが、実際には体に沿って腕を動かし、手に何かをさせて、イライラを静めているのだ。突きつめれば、これらも辺縁系がコントロールしてストレスに反応して現れる、なだめ行動ということになる。


次に、最も一般的によく目立つなだめ行動をいくつか挙げておく。これらの行動を目にしたら、一瞬立ち止まり、「なぜ、この人は自分をなだめているのだろう」と考えてみてほしい。なだめ行動を、その原因となったストレスと結びつけられるようになれば、相手が何を考え、何を感じ、何をしようとしているのかを、より正確に判断するのに大いに役立つ。