第2057冊目 “司法試験流” 勉強のセオリー 伊藤 真 (著)


“司法試験流

“司法試験流"勉強のセオリー (NHK出版新書)

  • 時間の制約を課して集中力を高める


「悪い時間の過ごし方」とは、どういうものでしょうか。私が思うに、やはり一番は明確な目的意識を持たずに過ごすことなのだと思います。目的意識を持っていないと、休憩している時間ですら何か後ろめたい気持ちになってしまうものです。ちょっとぼーっとしているだけで、「あ、こんなぼーっとしていたらいけないな」とか、「音楽なんて聞いてちゃいけない」と思ってしまう。友達と遊びに行ったり、飲みに行ったりしても、「本当は飲んでる場合じゃないのにな」と思ってしまいます。そこを、「今は飲みに行っていい時間だし、こういう時間を作ることが、実はこの後の勉強や仕事に効果をもたらすんだ」ときちんと意識してさえいれば、そうした時間も心から楽しめるわけです。


それは、結局、自分が時間をコントロールするという意識を持つことだと思います。これは言うなれば、主体的に生きるということです。かく言う私も、先にも触れたように時間を上手に使えるタイプではありませんでした。で、とにかくいつも後悔しているわけです。「なんか遊んじゃったな」とか「あのとき、もっとあやっておけばよかった」と、振り返ってはグズグズ考えている。そんな自分が嫌になってしまった時代もありました。


特に学生時代というのは、時間が無限にあるように思っていましたから、司法試験の勉強を始める前までは友達との遊びやサークル、バイトに明け暮れていました。当時の生活はというと、朝何時に起きてもいいし、飲みに行って終電がなくなっても、別に何時に帰っても構わないという感覚。一日が二四時間だsという概念すらないわけです。もう、本当にダラダラしていました。


結局、時間は有限であることを意識する。もっと言えば、自分は必ず死ぬということを意識するといいのかもしれません。やはり、死を意識すると、時間を大切にしようと初めて本気を思うものです。


勉強も同じで、たとえ日々の小さな勉強でも、「今日は問題を一〇問解こう」と思ったら、必ずお尻を決める。つまり、意識的に自分に時間の制約を課すことが大切です。


ここで集中量について具体的に考えてみましょう。「脳の仕事量=回転数×時間」です。その回転数が、いわゆる集中力です。そこで回転数を高めるためには、当たり前ですが、仕事量を明確にして時間を制約する必要があります。


要するに、一〇問を一〇分で解くという制約を加えれば、一問を一分で解かなければいけませんし、さらに、一〇問を五分で解こうと思ったら、倍の速さが求められるわけです。ですから、集中力を高めるには、仕事量を決め、それにどれだけの時間をかけるのかを決める。この二つを確定することです。


逆に、時間を決めずに鉛筆を舐め舐め、一〇問解いて「はい、今日の勉強おしまい」というのは、最悪の勉強の仕方です。あるいは、読む分量を決めずに「今日は三時間本を読もう」と時間だけ決めるような勉強の仕方では、やはり集中力を高めることになりません。


繰り返しになりますが、集中力を上げるためには、仕事量と時間を明確に設定して、時間を短くしていくか、ないしは仕事量を増やすことによって回転数を上げる訓練をするということです。やはり、自分に対してちょっとした負荷をかけるということが大切です。企画書を作るにしても、時間をかければ良いものができるかというと、そういうわけではありません。皆さんも経験があるかと思いますが、「この三〇分で書くぞ」とか「次のミーティングまでに間に合わせなければいけない」といった締め切りがあるからこそ集中できる。グッと圧縮することで、良いアイデアが生まれるのです。