第2058冊目 “司法試験流” 勉強のセオリー 伊藤 真 (著)


“司法試験流

“司法試験流"勉強のセオリー (NHK出版新書)

  • 困った時の「オールリセットボタン」


ところで、「計画を立てて勉強する」と言っても、実はそこには三つの難しさがあります。それはまず、計画を立てることの難しさ、そしてそれを続けることの難しさ、あとはやはり計画が遅れたときのキャッチアップの難しさです。


では、どのようにスケジュール管理をしていけばいいかというと、意識的にもう一人の「アドバイザーの自分」を作ること、つまり自分を客観視するということが何より重要になってきます。


そこでおすすめしたいのは、一ヶ月に一度か、あるいは三ヶ月に一度、定期的に「棚卸し」をする日を決めて、今の勉強のやり方をすべて見直してみるという方法です。「遅れたから」見直すのではなく、棚卸しの日もあらかじめスケジュールに入れておく。その日は勉強なんかせずに、今までやってきたことを整理して、それからゴールをもう一度確認し、やらなければいけないことを書き出しチャックしていきます。そうすると、終わっている科目もあれば、途中までしかできていないものがある。そこをもう一度仕切り直して、今やるべきことの優先順位づけができているかを確認しながら、計画を立て直したり、作戦を練り直したりする。そうした日を、あらかじめ決めておくのが有効です。


その日が来たら、自分をまな板の上にのせて、別の自分がそれを評価し励ましてやる。こうしたことを定期的にやっていかないと、そのままずるずるといってしまい収拾がつかなくなります。「頑張ればなんとかなるじゃないか」「リカバーできるかもしれない」と思いがちですが、それはなかなか難しいものです。


ですから、時には勉強しない勇気、切り捨てる勇気も重要です。途中までやりかけていたものも、「これはもうここまででいい」と切り捨てて、次の新しいところからまたスタートする。「オールリセット」と私はよく言っているのですが、リセットボタンを押すように、「たまっていたものはもういい」と一旦置いておき、「ここから新しい科目をスタートさせて、残っている部分はどこか余裕ができたところで埋め合わせをすればいいや」という大らかな気持ちで仕切り直します。そういう、強制的なリセットのタイミングをあらかじめ作ることが、一人で勉強するときのポイントです。そもそもゴールからの発想で優先順位をつけてスケジュールしているわけですから、そこで切り捨てたものも、あとから考えると意外と必要がなかったと思えるケースが多いのです。


意外とよう耳にするのは、「途中で計画倒れしてしまうことが怖いから、スケジュールを作らない、作りたくない」という声です。けれども、計画を立てること自体に意味があり、極論を言えば、実行できるかどうかは二の次なのです。なぜなら、計画を立てられたということは、やはりゴールまでの自分を客観視できているということですし、つまりは、向上心がある証だからです。


もっと言えば、計画はあくまえ計画ですから、やはり、すべてを実行しきれるものではないということを、あらかじめ認識しておくべきです。計画倒れをするのは当たり前、すべてが計画どおりにいく人生などあるはずがないのですから。したがって、「自分はなんでこんなにできないんだろう」と落ち込む必要など全くありません。見直しをして、何度でも態勢を立て直していけばいい。それを繰り返すたびに、少しずつ自分の目標や理想に近づいていることを意識したいただければと思います。