第2052冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 尖塔のポーズ


尖塔のポースは、最も確実な自信の手がかりと言えるかもしれない。両手を広げて指先同士をつけるもので、合掌の手に似ているが、指の間を閉じないで広げ、手のひらの間も広げる。手が教会の尖塔のてっぺんのように見えるので、尖塔のポーズと呼ぶ。米国では、女性は低い位置(腰のあたり)で尖塔を作りがちで、観察するのが難しいことがある。男性はもっと高い胸のあたりで作る傾向があるから、見えやすいし、より強力なものになる。


尖塔のポーズは、考え方や地位に自信があることを表している。それは、何かについてどう感じているか、自分の考えをどれだけ熱心かを、周囲の人々に知らせる効果をもつ。社会的地位が高い人(弁護士、判事、医師など)は、日常的に行動の中で尖塔のポーズを見せることが多いが、それは自分自身と自分の地イットに対する自信の表れだ。誰でも時々はこのポーズをとるものだが、その程度はスタイルもさまざまに異なってくる。ある人は四六時中やっているし、ほとんどやらない人もいれば、ポーズを変形している人もいる(両手を組み合わせ、親指と人差し指だけを伸ばして先端を合わせるなど)。また、テーブルの下でする人も、相手に見えるように高い場所でする人も、頭の上でする人までいる。


尖塔のポーズがもつ強力なノンバーバルの意味に気付いていない人は、ポーズがかなり長い時間続くことがあり、特に快適な状況が続いていれば、その傾向が強まる。尖塔のポーズが手がかりになると気付いている人でさえ、なかなかやめられない。その場合お大脳辺縁系が無意識のうちに反応してしまうから、尖塔のポーズをとらずに済ませるのは難しい。ことに興奮していれば、自分の反応をいちいち振り返って制御するのを忘れているからだ。


周囲の状況は刻々と変化し、私たちの人やものに対する反応を変化させる。そんな場合には一瞬にして、大きな自信を表す尖塔のポーズが自信のない手のポーズに変わる。自信が揺らいだり心に疑いが迷い込んだりすれば、尖塔のポーズは手を組み合わせたり祈りのポーズになるだろう。ノンバーバル行動のこうした変化は瞬時に起こり、変化する周囲の出来事へのその時々の心の反応を、とても正確に表して明らかにする。(大きな自信を表す)尖塔のポーズから(自信のなさを表す)祈りのポーズへ、そしてまた(大きな自信を示す)尖塔のポーズへと変化し、その人の確信と疑いの浮き沈みを、そっくりそのまま表すこともある。


また、正しい尖塔のポーズは好ましい影響を与える手の置き方を、意識して利用することもできる。尖塔のポーズは、自信と落ち着きを強力に伝える力をもっているので、そんなノンバーバル・シグナルを出している人に異議を申したてるのはなかなか難しい。だから尖塔のポーズを身につけておけば、実に便利に利用できることになる。講演者販売担当者が言いたいことを強調するのにつかるほか、誰でも大切なポイントを伝えようとするのに利用できる。就職の面接を受けているとき、会議でプレゼンテーションをしているとき、あるいは友だちと何かを議論しているとき、自分の手の動きに自信があふれているかどかを考えてみよう。


専門家の会議では、女性がテーブルの下やとても低い位置で尖塔のポーズをして、せっかくもっている自信を無駄にしているのをよく見かける。落ち着き、能力、自信――ほとんどの人が、もっていることを知ってほしいと思っている性質――を相手に伝えられるこのポーズの威力を知って、もっと多くの女性が、テーブルの上で、このポーズを見せてほしいものだと思う。