第2106冊目 世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた: グローバルエリートは見た!投資銀行、コンサル、資産運用会社、プライベート・エクイティ、MBAで学んだ15の仕事の極意、そしてプライベートの真実  ムーギー・キム (著)



「与太話」の鬼になる――ふと聞いたプライベートの話をデータベース化して活用する


「そうそう、この前、話をしていたゴルフのコンペ、どうやった? スコアの具合は?」


「あっ、忘れる前にこれ。前、奥さんダンマリン オリエンタル ホテルのローズペダルジャムが欲しいと話していたでしょ。たまたま今日近くまで行ったから買っておいたよ」


仕事の本題が始まる前に「与太話」に花を咲かせる人に限って、何かと仕事をとってくるものだ。それにより、プライベートな関係を構築しやすくなるからだろう。何気なく話したプライベートなことを覚えておいてくれていると嬉しくなるのは、どこの国でも同じである。


MBS時代、アントレプレナーシップや企業買収の授業を担当する人気教授がいた。


その教授は、教職につく前、某大手企業で法人営業の仕事をしていたときにつくった「与太話のベータベース」がいまも役に立っているという。


たとえば顧客と話をしていて、ふとした拍子に聞き出した相手の誕生日をメモし、帰宅後、パソコンのデータベースに入力しておく。


それをもとに、15年たったいまでも、誕生日には「おめでとう」メールを、同じく聞き出した相手の趣味や家族の話を添えて送り、それが関係構築や案件獲得で非常に役立っているという。


「15年前に一度しか会っていない人から『誕生日おめでとう」のメールが毎年届く怖いのでは?』と思わず質問したが、細かい心配りに感謝してくれる人が多いという。


欧米のビジネスカルチャーは勝手にドライだと勘違いされがちだが、プライベートな「与太話」をデータベースに保存し、関係構築と営業トークに活用しているトップエリートは少なくない。


たしかにこの手の「ふとした『与太話』を覚えていて、あとあと実行してくれる」というのは相当ハートをつかまれる行為である。


私も外資系金融機関やコンサルをめざす学生からよく就職相談を受けるが、拍子に「とらやのようかんと桃のゼリーが好きだ」と白状したところ、内定後に、とらやのようかんと桃のゼリーを送ってきた学生がいた。


私は心から感謝するとともに、「転職のときも絶対相談にのるからな!」と意を決したものである。小さな心配りが大きな報酬につながるのが人間関係を機微というものである。