第2100冊目 なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか? 小倉 広 (著)


なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?

なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?


私たちが考えるリーダーシップとは、1970年代にEPホランダーが提唱した信頼蓄積理論に基づきます。リーダーシップとはリーダーが組織に与える影響力。すなわち人を動かす力、と定義し、その源泉には信頼関係にある、と考えるのです。


「何を語るかではなく、誰が語るか、が人の心を動かす」


どんなに正しいことをリーダーが部下に話しても、リーダーが部下から信頼されていなければ、その言葉は説得力を決して持たない。逆に、部下から信頼されているリーダーは、多少、話の中身が曖昧でも部下は信じてついききてくれている。信頼関係の多寡がリーダーシップの発揮度合いを決める、という理論です。


つまりは「信頼関係なくしてリーダーシップなし」。そして、同時に「信頼関係なくしてフォロワーシップなし」とも言うことができる。


リーダーが信頼関係を築き正しいリーダーシップを発揮している状態でのみ、部下にフォロワーシップを求めることができるようになるのです。


部下にフォロワーシップを求める前に、リーダーが信頼関係を築き正しいリーダーシップを発揮する。その必要性が理解いただけたのではないでしょうか。

  • 指示命令は最低レベルのリーダーシップ


先に挙げた会社で導入されていた古いタイプのリーダーシップ。それはリーダーが強烈な情熱を持ちトップダウンで指示命令する、というもの。


しかし、多く野場合、それだけでは部下に受け容れられることはありません。部下は上司に愛想を尽かし、アンチ・リーダーもしくは風見鶏、傍観者になる。決して自ら上司についていくプロフェッショナル・フォロワーになることはないのです。


指示命令は最低レベルのリーダーシップです。いや、リーダーシップとは呼べないかもしれない。そうではなく、部下がやる気になるような環境や働きかけをする。部下にスキルを付与する。


つまり、MUST(やるべきこと)を語るのではなく、WANT(やりたいこと)やCAN(やれること)を作り出す。それが真のリーダーシップなのです。


しかし、世の多くのリーダーはMUST(やるべきこと)ばかりを語ってしまう。それでは部下はついてこないのです。


◎発揮するなら最上級のリーダーシップ


では、どのようにすれば、高いレベルのリーダーシップを発揮できるのでしょうか?


その答えは「模範を示す」というものです。


つまり、リーダー自らが部下に先立って行動し手本を示すのです。


例えば、オフィスの清掃であればリーダー自らが真っ先に取りかかる。ゴミが置いていれば真っ先に拾う。それを繰り返すのです。


押しつけられれば反発するのが人間です。しかし、身近に素晴らしい模範があれば、人は反発せずに学ぶもの。それをリーダー自身が行うのです。


ただし、ここで注意しなければなりません。


模範を示す行為を、部下に指示命令するための方便にしてはいけない、ということです。


模範を示す行為はテクニック的、示威的に行っては効果がない。リーダー自身が心の底から大切なことを信じて、自ら模範を示し続けて初めて効果を発揮するのです。


ですから、最初のうち数回だけ自らが模範を示し、わかったか。後はおまえたちが代わりにやるのだぞ」という姿勢ではうまくいきません。部下がついてきても、ついてこなくても、自分が信じる信念として継続する。その時に初めて部下に影響をもたらすのです。