第2099冊目 なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか? 小倉 広 (著)


なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?

なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?

  • 「プロフェッショナル・フォロワー」が組織に与える好影響


◎「僕がやります!」……直接的にフォロワーシップを発揮


自我を捨てチームに貢献すると決意しリーダーやメンバーの弱みを陰でこっそりと補う。そんなフォロワーシップの発揮方法には、実は2種類あるのです。


一つ目は「直接的発揮」。つまり、フォロワー自らが、チームのために行動したり、率先して発言することで目標達成に貢献することです。


例えば、会議の場面。皆が遠慮してシーンと黙り込んでいる時に、ハイッ!と積極的に手を上げて場を盛り上げる。例えば、誰かやってくれないかなぁ、とリーダーが言った瞬間にハイッと手を上げて率先して仕事を手伝う。そんな行動です。それは、すなわちフォロワーの言動そのものが目標達成のプロセスになる、というもの。言葉を変えれば、プレイヤーとして積極的にチームに貢献する、というものです。まずはこの行動が第一に求められるのです。


◎「リーダーに協力しようよ」……間接的にフォロワーシップを発揮


フォロワーシップの発揮方法には、もう一つスタイルがあります。それは「間接的発揮」。すなわち、フォロワー自らが自分で動くのではなく、人を動かす。人を正しい方向へ導くことでチームの目標達成に貢献する方法です。


例えば、会議の場面。皆が遠慮してシーンと黙り込んでいる時に、「佐藤さんはどう思う?」などと質問を投げかけて話を引き出す行為がそれに当たります。


また、誰かがネガティブな言動を取った時に「山田さん、そういうやり方は、やめようと。リーダーが言っていた方法で行動を統一しよう。今度、気をつけようね」などと人の間違いを正す行為もこれに当たります。


もちろん、アンチ・リーダーが陰口を言っている時に、それをたしなめるのも「間接的発揮」の一つです。「森下さん、リーダーも頑張っていると思いますよ。みんなで力を合わせてリーダーを支えましょうよ」と語りかけるのがその方法です。


このように「間接的発揮」は自らが頑張るだけではなく、人を動かしたりたしなめたりすることでチームを成功へ導くアシスト役です。


しかし、この行為はとかく誤解を受けたり嫌われたりする可能性が高いもの。だから誰もやろうとはしないのです。それを承知でやるからこそ価値が高い。チームのためになるのです。


「プロフェッショナル・フォロワー」は、「直接的発揮」で自らが頑張るだけでなく、「間接的発揮」で仲間を動かすことも求められます。それができる人こそがホンモノの「プロフェッショナル・フォロワー」なのです。


◎まずは上下間の信頼からスタート


まえがきで引用したロバート・ケリー教授が提唱するフォロワーシップには本書のメッセージである「貢献力」だけではなく「批判力」が取り上げられています。


下はリーダーよりも現場に近い。だからこそ、顧客要望を吸い上げ提唱し、時には上司を悲観する。それこそが組織に活力をもたらす、という考え方です。


しかし、この「批判力」。アメリカではうまく機能しますが、日本でストレートにやってしまうことはむしろ危険ではないか、と私は思います。


いきなり、公の場でリーダー批判をすれば、いくら内容が正しくともアンチ・リーダーと同じ害悪を組織にもたらします。だからこそ「批判」の前にリーダーと部下との信頼関係を築かなくてはならない。


そのために部下は「上司を上司として認め」「陰でこっそりと上司を助ける」動きを先行しなければならない。そう思うのです。


そして、信頼関係という土台ができあがったとしたならば。その先にはこれまで以上に部下が上司と建設的摩擦を起こすことができるようになる。つまり、信頼関係という土台があるからこそ、安心して批判ができる。この順番が現実的であり、有効ではないか、と私は思います。