第2095冊目 なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?  小倉 広 (著)


なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?

なぜ、部下はリーダーの足を引っ張るのか?


◎小さなチームにもナンバー2は必要


あなた自身が信頼関係に基づくリーダーシップを発揮し、時には自らフォロワーシップの模範を示すことができるようになったら。いよいよ、次のステップに参りましょう。


そう、ナンバー2を指名するのです。


どんなに小さなチームでも、リーダーと部下の間には大きな意識の差ができる。リーダーは部下に物足りなさを感じるものなのです。そして、時に強く言いすぎ、自分の考えを押しつけたりする。しかし、リーダーの押しつけに部下は敏感です。


誰もが、自分の考えを無理やり変えられるのを、嫌うのです。


そんな時には横シャワー(刺激)。上司からの指示命令という上シャワー(刺激)ではなく、自分と同レベル、同じ階層の同僚から刺激を与えるのが有効です。


つまり、リーダーのあなたが要望を伝えるのではなく、部下の中のお兄さん役をナンバー2として指名。彼(彼女)を通じて指導するのです。


横シャワーは、上シャワーと違い強制力がありません。だからこそ、彼らはその言葉に心を開き素直に受け容れる。


ナンバー2をリーダーと部下の架け橋として有効活用し、チームを活気づけていきましょう。


◎ナンバー2には翻訳を求める


ナンバー2にはリーダーと部下の橋渡しを求めましょう。上から下へのトップダウン、下から上へのボトムアップ。その双方に翻訳機能を求めるのです。


リーダーから部下へのトップダウンは得てして高い要望になりがちです。その際トップダウンをストレートに伝えさせてはいけません。ナンバー2がリーダーの言葉を受け容れやすいように翻訳するのです。部下が理解しやすく、やる気になるような言葉に置き換える。時には、部下一人ひとりに合わせて伝え方を変えるのも有効です。翻訳センスが問われる仕事です。


ボトムアップも同様です。現場の声を翻訳せずにそのままリーダーに伝えてはいけません。現場の声の9割以上は不平不満でしかりません。それを実現可能な提案という形に変えるのです。その上でリーダーに伝える。そして、その案をリーダーと共に実現していくのです。


翻訳なしでスルーするだけなら電子メールで事足りる。ナンバー2の役目は不要なのです。リーダーと部下の間に入り両者の潤滑剤になる。その役割をナンバー2に求めましょう。


◎ナンバー2がみんなに模範を示す


リーダーの高い要望を受け容れやすい言葉に翻訳し、現場の不平不満を提案に変えてリーダーと実現する。この行いは、まさにフォロワーシップの実践に他なりません。つまり、ナンバー2は両者の翻訳機能を果たしながら、同時にフォロワーシップ発揮の模範を示しているのです。


先にお伝えした通り、指示命令が最低レベルのリーダーシップであるならば、模範を示す行為は最上級のリーダーシップに当たります。あなたのチームのナンバー2がフォロワーシップの模範を示し続ければ必ず他の部下もフォロワーシップの大切さに気づくことでしょう。


ほとんどの部下はリーダーシップの大切さをしっていたとしても、フォロワーシップについては、その存在すら知らないことでしょう。そんな時は理屈や概念をいくら語ってもかまわない。見本を示し、模範を示すこと以外に理解させることは不可能なのです。


これだけの重要な行いをするナンバー2。あなたは彼(彼女)に対して、感謝の意を常に表明し、信頼し、リスペクトすることが必要です。リーダーとナンバー2の間の信頼関係がフォロワーシップ発揮の度合いを規定するのです。


◎リーダーが自ら求めるのは難しい


親が子どもに対して「親孝行しなさい」と言っても説得力がありません。親孝行の大切さを説いて最も説得力があるのは親の立場の人間ではなく、聞き手と同じ立場、つまりは子どもの立場の人間に体験談を聞くのが一番です。


親孝行をしないまま親を失った悲しみと後悔。親に育ててもらったことへの感謝の言葉。それを聞いて初めて、聞き手も親孝行の大切さを知るのです。「私に対して親孝行しなさい!」と言ってはおしまいなのです。


それはフォロワーシップについても言えること。リーダーが部下に対して「フォロワーシップを発揮しなさい」と言うことは「私に親孝行しなさい」と言うに等しい。つまり、説得力を持たないのです。それを言ったらおしまいよ。はい、それまで、なのです。


◎ナンバー2に「要望することを要望する」


それで活躍するのが先に示したナンバー2の存在です。彼を通じて部下たちにフォロワーシップを要望するのです。つまりはこういうことです。


「ナンバー2に対して、『他メンバーへフォロワーシップ発揮を要望する』ように要望する」。それが、リーダーがすべきナンバー2への要望なのです。


しかし、ナンバー2にとって、フォロワーシップを自ら発揮し模範を示す行いまではできても、他メンバーへ要望するのは難しいでしょう。


誰だって、誰かに要望するのはイヤなもの。それにより、「あいつは上司にゴマをすっている。自分たちにまでもゴマすりをさせるのか?」などと思われる可能性もあるからです。


要望する、ということは、現状を否定する、に等しい行為です。つまり、ナンバー2が他メンバーへ大してフォロワーシップ発揮を要望する、ということは、他メンバーに対して「それじゃダメだよ」と言うようなもの。


それは、ナンバー2にとって大いなるストレス要因となることでしょう。


しかし、リーダーになる、ということはそういうことなのです。リーダーは人を動かすのが仕事です。人を動かさないリーダーはいません。だから、たとえストレスになろうとも、今か予行演習として、人を動かす練習をさせるべきなのです。


それをしっかりとナンバー2に伝えた上で、要望することを要望しなければなりません。次のリーダーになってもらうためには通らなければならない道なのですから。


◎つらい役目だからこそ最大限の勇気づけを


しかし、ナンバー2には正式な肩書きも役職手当もありません。あくまでもインフォーマル(非公式)な形で協力してもらうしかないのです。


だからこそ、リーダーはナンバー2にきちんと敬意を払いリスペクトしなくてはなりません。他メンバーに以上に辛い厳しい要望をしておきながら、ナンバー2を他メンバーと同じように雑に扱ってはうまくいかないでしょう。


私はかつてチームのナンバー2を任された時、権限もないのに、上司から管理職しか知ってはならない経営の極秘情報や人事異動などの情報を教えてもらっていました。また、管理職がすべき人事考課のたたき台を、管理職でもない私は任されていたのです。


これにより、私が大いにモチベートされたのは言うまでもありません。正式には管理職ではないにもかからわず、インフォーマルに、管理職と同じような扱いを受けたことで、それに見合う働きをしよう、と発奮されたのです。


リーダーはナンバー2をリスペクトし、特別扱いしなくてはなりません。そうすることで彼を大いに勇気づけ、やる気にさせることができるのです。リーダーはそこまで配慮しなくてはならないのです。