第2093冊目 本当に言いたいことが伝わる技術  箱田忠明 (著)


本当に言いたいことが伝わる技術

本当に言いたいことが伝わる技術

  • 相手を真似ると自然と波長が合ってくる


お互いを傷つけることなく、言いたいことを言い合えるような関係として、理想的な形として思い浮かぶのは、親友や仲のよい夫婦など、強い絆で結ばれた間柄です。


相手が「上司だ」「取引先だ」と思えば、なかなか言いたいことを言い出せないけれども、友人なら気兼ねなく言えるはずです。


では、気の置けない友人とはどんな人でしょうか。おそらく。気が合う相手、感覚が近い相手ではないでしょうか。


ふっと「あれが食べたい」と思ったら、相手も同じことを考えていた。別々に遊びに行ったらたまたま鉢合わせするなど、同じ行動をしてしまう。同じ映画、同じ歌手が好き、など。


いわゆる波長が合うというもので、自分と同じ部分が多ければ多いほど、相手に好感を持つものなのです。


逆に、「いい人だな」というのはわかっていても、何となくやることがちぐはぐで、かみ合わない相手といるとどうも居心地が悪いものです。


こうした関係を、実は、意図的に操作することが可能です。


やり方は簡単で、三つのポイントを意識して、相手のやっていることをそっくり真似ることで、自然と波長が合ってきます。


三つのポイントとは、具体的に、ボディランゲージ、気分・感情、言葉のことで、この三つを意識して合わせることを専門用語で「ペーシング」と言います。


相手とペースを合わせることで波長が合い、「ああ、この人と気が合うな」と感じて好感度が増すというわけです。


ペーシングの詳しいやり方は次の通りです。


1、ボディランゲージを合わせる


長年連れ添った夫婦など、息のあった者同士というのは、動作が似てくるものです。


夫が手を上げれば妻も手を上げ、妻が振り向けば夫も振り向くというように、タイミングもやることも一緒、という具合になってきます。


このように、まるで鏡映しのように同じ動作をすることを、「ミラーリング」と言います。


そこで、相手と同じ動作をすることで、波長、ペースが合ってきます。相手が咳払いをしたら自分も咳払いをし、お茶に手を伸ばせば、自分もお茶に手を伸ばします。


2、気分・感情を合わせる


相手が悲しければ自分も悲しみ、喜べば、自分も喜び、怒れば、自分も怒ります。


夫婦で映画を見て、妻は感動で涙を流しているのに、ふと横を見たら、夫はなんだか難しい顔をしていたらしらけてしまいます。


自分と同じように泣き、同じように笑うから、「あなたもそうなのね」という親近感が湧くのです。


このように、気分・感情を合わせることも、ペーシングには効果的で、この方法を「チューニング」と言います。相手に合わせて同期するように感度を合わせるということです。


この場合、必要なのは気分・感情を合わせることですから、たとえば、恋人が落ち込んでいるときは「元気を出せよ」と励ますのではなく、「俺もそうなんだよ」と一緒に落ち込むことで、より好感度が増すのです。


3、言葉を合わせる


リフレクティウングのところで勉強したように、相手の言っている言葉をそっくり真似して返すことで、好感度は高まります。


さらに、ペーシングを考えた場合は、言葉だけでなく、しゃべり方も真似するとより効果的です。


相手が早口なら自分も早口でしゃべり、声のトーンが高ければ自分も高く、大きな声なら自分も大声でしゃべります。


また、相手がフレンドリーに接する人なら、自分もフレンドリーに、ネクラな人なら自分もネクラになります。


これを「マッチング」と言います。


以上の三つを合わせ、英語にしたときの頭文字をとって「ペーシングのBMW」と私は呼んでいます。


交渉ごとなどをするときに、重要なテクニックなのでぜひ覚えてください。


外資系企業に勤めていたときにつくづく思ったのは、アメリカ人の上司に合わせて、「ハーイ、ジョージ!」なんて米国式のあいさつを何のてらいもなくできるような同僚は、たいした実績がなくても順調に出世していき、「どうも俺はああいうのは苦手だ」と敬遠する人は、いくら仕事ができても見事に取り残されていきます。


これは、えこひいきでなく、同じような感覚を持っていない相手だと、「何を考えているのかわからない」と感じるので信頼して仕事が任せられないのです。