第2090冊目 読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方  簑下 成子 (著), 佐藤 親次 (著)


読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書)

読顔力 コミュニケーション・プロファイルの作り方 (小学館101新書)

  • プロファイル量の多い人はコミュニケーション上手


私は初対面の人と話をするシチュエーションが不得意です。それは私が視線恐怖症だからです。「視線恐怖」には二方向あり、ひとつは「他人の視線が怖い」、もうひとつは「自分の視線がどこを見ているのかを相手に知られるのが怖い」です。


相手が自分をどう見ているのかも気になりますが、職業柄、いろいろな人を観察するくせがついているので、知らず知らずのうちに相手の表情や動作などを見てしまう。初対面のときに、そんなことをやっていると知られて、相手にいやな思いをさせてしまうのではないか、と余計なことを考えてしまうのです。


初めて、会う人とコミュニケーションをとろうとするとき、人はどこか共通点を探しはじめます。


「学校が同じだった」「年齢が近い」「好きな音楽が共通している」など、すでにわかっているその人の背景や会話から共通点を探す場合もあります。


それ以外にアナログ的な感覚、例えば「この人は、友だちの奥さんに似ている」といったような、身近な人に似ているという感覚から、その奥さんに受けそうな話題を探したら、反応がよかったということはありませんか。


外見や話し方から、「体育会系でチームスポーツ、ラグビーやアメフトをやっていた人に似ているなぁ」と思って訊いてみるとそうだったり、相手の職業を訊く前に「学校の先生でしょう」と当てたりなど、偶然ではなく、相手の情報を当てはめることができるのは、あなたの中に「コミュニケーション・プロファイル」がすでに作られているからです。


プロファイル量がたくさんある人は、相手がどんな人か的確に把握する確率が高くなります。たくさんのプロファイルの中から、「この人のここが似ている」「ここは違う」という形でふるいにかけて絞り込むことができます。その結果、頭の中にさらに確率の高いプロファイル・データが作り出されるのです。


もともとのプロファイル量が少ないとそのプロセスをとることができません。たとえ試してみても当たらないでしょう。


コミュニケーション上手な人は、本人も意識していないのですが、このプロセスをおこなっています。しかも人と会うたびにどんどんプロファイル量を増やしています。優秀な営業マンはそういうプロファイルを作ることで、お客さまのニーズにすぐに対応できます。「販売したい商品をこう見せると売ることができる」という販売プランをプロファイルから頭の中で組み立て直すことができるのです。


では、コミュニケーションのために使えるプロファイルを作るには、またそのプロファイル量を増やすには、どうすればいいでしょうか。


その最初の段階として、以下の三つがあげられます。


1、相手に興味を持つ


プロファイルを作る第一歩は相手に対して興味を持つということです。人は好きなものや好きなことに対しては「もっと知りたい」という要求が出てくるものです。興味をもたなければ情報が詰まっている表情を読み取ることができません。


2、プロファイルのレベルを一定にする


プロファイルは漠然としたデータだけだったり、情報量が少なかったりすると役に立ちません。


生活歴や趣味などの情報以外に、自分なりの情報項目を増やし、最低限のレベルを作ることでプロファイルを自分用にカスタマイズするのです。私の場合は精神科医なので、職業的な切り口でプロファイルしている部分もあります。「あの人、少し自己愛性人格障害の要素がある」といった情報も入れています。対象を色に喩えて分けている人もいます。


3、ポジティブなプロファイルだけでなく、ネガティブなプロファイルも作成する


恋愛に限らず、相手に興味をもてる、好きなタイプの人のプロファイルに入れる情報は多くなりますが、必ず嫌いなタイプの人のプロファイルも作るようにしなくてはいけません。たとえ、「この人、なんか合わない」と思っても、「なぜ合わないのか」を探れば自分はこういうタイプがなぜ苦手なのか理由がわかります。


「興味を持って相手に会うこと」は、それがたとえ嫌いなタイプの人であっても、なんらかの情報が残るはずです。嫌いだからといって避けてしまうのは、プロファイルを作成するうえでもったいないことです。