第2036冊目 ドラッカー流 最強の勉強法 中野 明 (著)


ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

  • 勉強成果のフィードバック


計画倒れという嫌な言葉がある。小さい頃から現在まで考えると、私は一体いくらくらい計画倒れを経験してきたことだろう。計画倒れと同じ数だけ計画を達せいできていれば、私の人生お大きく変わっていたに違いない。


とはいえ、達成できなかった計画のことをくよくよ考えていても仕方がない。むしろ、前向きに検討する方がのちのためである。そもそも計画どおりに進んだものと計画倒れに終わったmの、両者の違いは一体どこにあったのか?


今振り返ると、両者の違いは、その計画をやり遂げなければならないという義務感や責任感の度合いに、大きな違いがあったように思う。自らの勉強に対して、強い責任感や義務感を持つということは、実は非常に困難なことである。


前にもふれたけれど、そのため、瞬時的に勉強に燃えていても、やがてその炎は確実に下火となる。そして最悪の場合、「誰からも怒られないから」とうやむやになってしまう。


常に下火となる危険をはらむこの勉強意欲を、何とか消えぬよう維持し、あるいは再び勢いよく燃やせられれば、これに越したことはない。特効薬はないかもしれない。しかし、かなり効く薬はある。勉強成果のフィードバック分析がそれだ。


これは、期待した成果と実際の成果とを比較検証する作業である。目標管理において、エルザ先生やドラッカーの新聞社時代の編集長が実行したものに他ならない。夕刊紙フランクフルター・ゲネラル・アンツァイガーの編集長エーリッヒ・ドンブロウスキーが、次のような方法をとったのを思い出してほしい。

  • 半年間でやった優れた仕事は何か
  • 一生懸命やった仕事は何か
  • お粗末な仕事や失敗した仕事は何か


われわれはすでに、自分の手帳やグーグル・スケジュールに1週間のTDをリストアップした。ドンブロウスキーは、半年ごとにフィードバック分析を行ったが、われわれの場合は、この3つの項目について、エルザ先生のやり方と同様、1週間ごとに比較検討するのが良いだろう。


そして、この検討結果に基づき、次週の計画を調整する。検討項目は次のとおりだった。

  • 集中すべきことは何か
  • 改善すべきことは何か
  • 勉強すべきことは何か


フィードバック分析では以上のことを実行する。ここで揚げた6つの項目は、そのままフィードバック分析のチェックリストとして利用できる。

  • フィードバック分析のメリット


フィードバック分析には大きな効果がある。フィードバック分析の結果、自分が得意だと思っていた分野の成果が芳しくないことがある。その逆に弱点だと思っていた分野の成果が意外に大きいこともある。


「強みを知る方法は一つしかない。フィードバック分析である」とドラッカーは述べるように、自分の強みと弱みをしっかり把握できる効果がある。


また、自分の強みと弱みをより適切に理解できると、ここで得た結果は次の新たな目標を立てる際の有力な情報になる。


つまり、強みに集中し、強みを強化する勉強テーマを立てられる、というわけだ。加えて、弱みが明らかになることで、行うべきでない勉強もはっきりする。


要するに、フィードバック分析とは、長距離型勉強において学習の質を継続的に改善するエンジンなのである。


定期的に目標と現状を検証するということは、自分が立つ現在のポジションを明らかにすることだ。自分の現在地を知ることは、自己分析の基本中の基本だ。そして、この現在地と、期待していた成果のギャップを知ることで、計画の修正が可能になる。


ところが、勉強の進捗状況が芳しくない場合、改めて分析しなくてもそれを自覚しているため、分析がおっくになる。これは現実を直視したくないからだ。その結果、ますます勉強が手つかずになり、やがては途中で諦めるという最悪のシナリオになりかねない。


誰しも、うまくいっていない現実を直視しなくないものだ。しかし、現実を見ることなしに、大きな成果を得られるとも思えない。つまり、フィードバック分析とは、現実を直視するための作業に他ならない。


なので、フィードバック分析は強制的に実行するようにするべきだ。というよりも、ドラッカーが言うように「自分の仕事ぶりの評価を、仕事そのもののなかに組みこんで」しまうことが重要なのである。そして、分析で得た結果から、次の行動の意思決定を行なう。


その意思決定とは、目標を修正することかもしれない。これにより、低くなったモチベーションを少しでも高くできる。これは計画を遂行していく上で、力強い後押しになるのは明らかだ。


また、その意思決定は、目標の修正ばかりとは限らない。場合によっては、今までの努力をサンクコストと諦めて、スパッと計画を中断することかもしれない。


仮にそうした場合でも、意思決定を先延ばしして結局中途半端に終わらせるよりも、格段に傷は浅い。