第2035冊目 ドラッカー流 最強の勉強法 中野 明 (著)


ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)


集中してひとつのことを実行する


以上、「選択」を実行することで具体的な勉強計画を立案できた。では、選択の次に来るのは何か。言うまでもない、集中である。「選択と集中」という言葉がある。「選択=計画」だとすると、「集中=実行」である。つまり、「選択と集中」とは、「計画と実行」のことに他ならない。


以前、日本経済新聞のコラムに、ある地方銀行の頭取が「選択と分散」とういタイトルで文章を書いていた。この地銀トップの主張は、一個所に投資を集中したのではリスクが大きいから、選択し分散して投資することが必要であり、「選択と集中」よりも「選択と分散」を重視せよ、というものだった。


一見もっともらしい主張なのだが、私はこの考えには賛成できない。分散投資リスクヘッジに欠かせない。これを念頭に置くならば、選択という行為の段階で、分散して選ぶべきである。いわば「分散と選択」である。


そして選択に分散のポリシーが含まれているならば、その後選択した対象に集中するのは当然のことである。せっかく選択したのに、力を分散していたのでは、大きな効果は得られない。つまり、その時点で必要なのは、選択したら集中である。


よって、「選択と集中」は正しい。入念に計画したら実行あるのみだ。間違っても、選択してから力を分散してはいけない。


この「集中=実行」で重要になるのが、「最重要要事からつねにとりかかり、そして、いちどきに一つの事柄だけを片付ける」というポリシーである。ドラッカーは、これが成果を上げる人物の基本姿勢だと主張した。


すでに、われわれは強制選択法によって、最重要事から直近の時間に配分するようにした。そして、その時間配分した最初に実行すべきことを、文字どおり愚直に実行することが集中の基本的態度になる。


ところが案外これとは反対のことが日常的に行われているものだ。その代表例が、一時に複数のことを実行するというものだ。これでは、二兎を追う者は一兎をも得ずになってしまう。「選択と分散」による失敗でる。


繰り返しになるが、最初にすべきことを最初に集中して実行する。ドラッカーはこれを「First Things Fiest」と表現したけど、英文のままの方が日本語で書くよりも説得力があるかもしれない。そして、そのタスクが終了したら、その時点で最初にすべきことを考える。先にもふれたように、時間の経過により、計画内容の優先順位は変化するからだ。


計画はあくまでもガイドラインである。上手に使えば勉強もはかどるが、それに拘束されては意味がない。目標に弾力性が必要だったように、計画にも弾力性が欠かせないのである。その時点での最優先事項を考え、ここでも最初にすべきことを実行する。この繰り返しこそ重要なのだ。