第2034冊目 ドラッカー流 最強の勉強法 中野 明 (著)


ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)

ドラッカー流 最強の勉強法(祥伝社新書207)


時間の記録の効用


見える化」という言葉を前にも使った。これはトヨタ自動車で考案された生産管理手法のひとつで、生産の工程や進み具合、異常か正常かなどを目で見てわかるようにする工夫の総称だ。


周知のようにトヨタ生産システムでは、カンバン方式がつとに有名だ。カンバンとは、生産工程の後高低が、前工程に対して必要な部品を要求する「請求票」のようなものだ。そして前工程は、請求された必要な部品を必要なだけ生産する。これにより在庫や仕掛品を圧縮するのがカンバン方式の狙いだ。そしてここで使うカンバンとは、後工程が必要としているものを見える化する道具に他ならない。


こうした見える化の手法は、現代では生産の現場だけでなく、事務も業務一般への適用が進んでいる。そして懸案でる時間を記録するということも、自分の時間の使い方を見える化することに他ならない。これには多様な恩恵がある。


まず、自分の時間の使い方を記録しちえるということを意識しだすと、できるだけ有効に時間を活用しようちう気持ちが強く働く。日々の時間の使い方をありのままに記録するという本来の趣旨に反するのだけれど、少しでも時間を効率的に使えるのだから、贅沢は言っていられない。


それから、時間の使い方を見える化することで、間違っている前提を明らかにできる。


誰しも自分が時間に接する態度について、前提や仮説を持っているだろう。「私は午前中、エンジンのかかりが悪い」「オレは夜型なのだ」「私は水曜日になると中だるみになるの。ほら今日もそう」などがそうだ。


ところが、時間の使い方を見える化することで、こうした前提や仮説が間違っていることがわかる。


たとえば、午前中は不得意と考えていた人が、実は午後の方がパフォーマンスが悪かったということが判明することもあろう。あるいは、水曜日どころか、ウィークデーは平均して中だるみ、という事実が明るみに出ることも考えられる。得てして思い込みは間違っていることが多い。その間違いを明らかにするのが時間の使い方の見える化なのだ。


さらに、自分の時間の使い方を見える化することで、自分独自のクセがわかるようになる。このクセには善玉と悪玉がある。もちろん善玉のクセはより伸ばし、悪玉は改善する。つまり強化ポイントを理解できる。


加えて、過去の記録と比較することで、時間の使い方の変化を把握できる。「最近パフォーマンスが落ちているような気がする」と感じたら、時間の記録の実行には絶好機だ。実際に実行してみるといろいろ面白いことがわかる。


たとえば、のちにふれるホットタイムに雑用が入っているとか、午後3時半前後のパフォーマンスが明らかに悪いとか、一度に複数のことを行おうとしちえるとかが判明する。もちろんこうした点も重要な改善ポイントになる。