第2029冊目 会話のうまさで人生は決まる! 成功に導く12のテクニック 単行本(ソフトカバー)安田 正 (著)


会話のうまさで人生は決まる!

会話のうまさで人生は決まる!

  • 表情と声でこれだけ差がつく!


ちょっと試しだと思って、朝の通勤時に周りの人たちの表情を観察してみてください。ビジネスパーソンたちの表情がいかに乏しいか……。


同じようなことが、会話の中や家庭でも起きていませんか? たとえば同僚に、「おはようございます」と挨拶をするとき、あるいは誰かと話をするときにも「相手の表情と声」を観察してみください。清々しい笑顔や挨拶に出会うことは、ほとんどないのでは? まるで、「良い表情を見せるのはソン!」とでも言いたげです。


外国人から見たら「日本は省エネ技術が進んでいるが、コミュニケーションまで省エネで済まそうとしているのか?」と思うに違いありません。その結果、「日本人は無表情」「日本人は嬉しいのか、不機嫌なのかわかりにくい」と言われてしまうのです。


ではなぜ、このように多くの日本人が「表情が乏しい」という印象を与えてしまうのでしょうか。そもそも、考えたこともないかもしれませんね。


これまでの日本は比較的、均一な文化背景を持った国でした。皆で共有する部分が多いために、「あ・うんの呼吸でも通じる/以心伝心で通じる」という前提で意思疎通をしてきました。そのため、話し方(抑揚、強弱など)や、表情を工夫しなくても相手の感情を察することができたのです。


いま、仲の良い友達のFくんと会い、彼がちょっとでも冴えない表情をしていると、


「Fくん、何だか調子が悪そうだな。体調でも悪いのかなぁ……」


「何かイライラすることでもあったのかな」


「もしかして、私が何か言ってしまったのかな」


などと素早く状態を察知して、その原因を探ろうとします。


このように私たちは些細な表情の違いを読み取ることが得意です。しかし、これには条件があります。


そうです。「共有する部分の多い間柄であれば」という前提です。仲の良い友達というのは、いつも一緒に食事をしたり、あちこちに出かけたりと同じ経験を通じて、お互いに考え方や感じ方をよく理解しています。つまり共有する部分が多い関係なので、この場合には些細な表情の違いでも読み取れるのです。


しかし、ひとたび共有する部分が少ない人と話をすることになった場合はそうはいきません。実際、初対面の人に対し、その表情だけから相手の気持ちや状態を読み取るのはなかなか至難の業です。


現在、私たちを取り巻く環境はこんな「共有する部分が少ない人」とコミュニケーションをしなければならない機会が増えています。とくにビジネスの世界ではグローバル化が進み、外国人とのコミュニケーションは避けて通れなくなってきました。


もっと深刻なのが、同じ日本人同士でも「共有する部分が少ない人」が増えていることです。社会の多様化が進み、年齢・仕事・立場が違っただけで、これまで日本人が経験したことがないほどコミュニケーションが難しくなっています。


私が管理職研修をしていると、次のような質問をよく受けます。


「部下を見ていると、やる気があるのかないのか、さっぱりわからないんです。『はい、がんばります』とだけは言うんですが、見ていると、とても頑張っているようには見えなくて……。どう指導すればいいんでしょうか」


きっと、部下の人ややる気はあるのでしょうが、それが上司に伝わっていないのですね。表情だけから「やる気」を読み取るのは、いまか簡単なことではありません。


このように私たちを取り巻く環境がこれまでとは変化し、お互いに些細な表情を読み取り合うコミュニケーションが困難になってきました。それゆえに、これからは自分の気持ちを表情で上手に伝える努力が求められるのです。


ちなみに、表情は信頼関係を築く上で、その人の印象を決める非常に大切な要素です。