第2028冊目 プレゼンテーションの教科書 増補版 [単行本] 脇山 真治 (著), 日経デザイン (編集)


プレゼンテーションの教科書 増補版

プレゼンテーションの教科書 増補版

  • 進行表の必要性


プレゼンテーションはテレビドラマとも、演劇や劇映画とも異なるが、一定の時間を計画に基づいて進行していく点では、同様の劇性をもったパフォーマンスだと認識すべきだ。前章で述べたように計画段階では適切な時間配分を行いながら、導入やクライマックスを組み込んで、プレゼンテーションのストーリーを構築していく。


時に強い口調で説得し、時にユーモアを交えて聞き手をリラックスさせ、あるときは資料映像に注目してもらう。映画や演劇ではこのストーリーを関係者全員が共有する必要があるため、文書化された台本として配布される。台詞や所作や、状況設定、登場人物の位置関係、効果などが書き込まれており、制作のためのいわば設計図書でもある。


プレゼンテーションが計画性をもったパフォーマンスであるとすれば、いわゆる台本に相当するものが必要になるだろう。しかしプレゼンテーションは聞き手の反応など状況の推移によっては即時的に話題を省略したり、予定より多くの時間を割いたりといったプログラムの変更が生じるので、細かく書き込まれた「台本」はほとんど意味をもたない。


多くの場合、進行にかかわる資料はプレゼンター本人だけに必要なので、チームメンバーとの情報共有を前提とした体裁も、ほかの関係者に気遣った書き込みも必要ない。したがって「台本」は本の体裁をなするものではなく、内容を項目ごとに箇条書きにしたペーパーや、要点や絶対にはずせない話題などを添え書きしたものがよい。


プレゼンテーションに求められる進行のための資料は、状況の変化や不測の事態に、相応の自由度をもって対応できるものでなくてはならない。映画が演劇に使われるような「台本」は必要ない。むしろ書き込みすぎは有害ですらある。必要な進行資料は、プレゼンターが自分で納得できる進行表あるいは、進行メモのたぐいでなければならない。