第2004冊目 仕事を「すぐやる人」の習慣 (『THE21』BOOKS) [単行本(ソフトカバー)] 「THE21」編集部 (編集)


仕事を「すぐやる人」の習慣 (『THE21』BOOKS)

仕事を「すぐやる人」の習慣 (『THE21』BOOKS)


キャノン電子(株)代表取締役社長 酒巻久


――「自分の判断基準」というのは、いったいどうすれば確立できるものなのでしょうか。


酒巻 判断力というのは、やはり経験に比例するもの。ですから、それを高めるには、「不安を抱えながらも、スピーディーに決断を下すこと」を、日々意識して続けることがなにより重要です。


――ただ、経験を積むにはどうしても時間がかかります。そうなると、「判断基準をもてるのは遠い先の話」ということになってしまいませんか。


酒巻 たしかに、自分で経験できることには限界があります。そこで私が社会人になったばかりにのことからずっと続けているのが、読書で得た学びをメモ帳に書き留めることです。たとえば、デール・カーネギーの『人を動かす』読んだら、とくに重要だと思ったポイントを自分よりの言葉で四つ五つの法則にまとめて、メモ帳に書き込めます。読みっ放しにしておかないで、そこで得たものを自分なりの言葉で整理・体系化しておくわけです。いわば、疑似体験のようなものです。


すると、メモ帳に書き込んだことが、自分の判断基準として蓄積されます。私は四十年以上もこの習慣を続けているので、新たな問題に直面したときでも、自分がどう判断して行動すればいいか、たいていメモ帳に答えが書いてある(笑)。もしその判断が間違っていたとしても、失敗から学んだことをまたメモ帳に書き込めばいい。こうしたことを繰り返すことで、問題に対する素早い決断と行動が可能になるのです。

  • 上司から頼まれた仕事の後回しはNG


――ただ、ビジネスマンの場合、基本的には自分の判断ではなく、上司の指示に従って行動しなくてはいけませんよね。上司の指示が曖昧だったり、方針が的外れだったりした場合、ついその仕事を後回しにしてしまう人が少なくないと思うのですが……。


酒巻 「なんでこんなつまらない仕事を、俺がやらなきゃいけないんだ」と上司の指示を無視して、ズルズルと先延ばしする……これは部下がいちばん避けなくてはいけないことですね。どんな上司も、部下の後回しにはすぐ気づく。しかも、とても不愉快(笑)。指示を与えた上司は、むしろできるだけ早いタイミングでの報告を期待しています。今日指示を出したら、ほんとうは翌日にでも報告がほしいぐらいです。


といっても、いますぐ成果を求めているわけではありません。上司は、途中経過が知りたいんです。「どんな手順で進めているのか」「トラブルは起きていないか」といったことを、逐一報告されると、上司は安心します。仮に、上司に途中経過をまったく報告しないまま三ヶ月後に成果を出した部下と、随時報告をしながら六ヶ月後に結果を出した部下がいた場合、後者のほうが「仕事が速い」と、上司は感じるものです。


だから、上司からのどんな指示に対しても、「サッと気持ちを切り替えて、すぐ取りかかり、すぐ報告するクセ」は、絶対につけるべきだと思います。


部下からみれば「こんなつまらないものを」を思える仕事でも、上司からの視点では意外と重要な仕事であることが多い。また、部下の力を試したり鍛えたりするために、あえて曖昧な指示を与えていることもありますからね。


もちろん、上司の方針が間違っているときもあるでしょう。でも正しい方針のときは誰がやっても成果が出るんですよ。逆に悪い方針のときは部下次第で成果に大きな差が出る。だから上の方針が間違っているときこそ、すぐに取りかかって成果を出さないといけません。そうやって頑張っていれば、直属の上司には評価されなくても、他の部署の上司が放っておくわけがない。このときは私が保証します。