第1981冊目 奇跡の営業 [単行本(ソフトカバー)] 山本正明 (著)


奇跡の営業

奇跡の営業


「オウム返し」で得られた小さな成功体験とは?


日本では近年、格差社会という言葉がよく聞かれるようになりましたが、営業の世界ではまさにその縮図で、ごく一部のできる人と大多数のできない人、完全に二極化しています。


同じ商品を扱っていながら、どうしてこれほど大差がついてしまうのか――。


理由のひとつは向上心です。できる人は自己研鑽に余念がなく、つねに新しい知識やノウハウの習得につとめていきます。


そしてこの向上心、モチベーションを生み出すのが第1章で触れた「自己肯定感」です。


――自分はできる人間だ。
――自分が売る商品はお客様の役に立つ商品だ。


そのように自分や自分の商品を肯定できるからこそ営業マンはがんばれる。もしもこの気持ちがなく、「自分は話し下手で営業にも向いていない」「こんな商品をおすすめしてお客様に気の毒だな」なんて思っていたら、向上心がわからないどころか、話し下手の武器となる「正直な気持ち」を伝えることもできません。もちろん、紹介をお願いするなんてもってのほかということになってしまいます。


逆にいえば、自己肯定感をもつことさえできれば営業マンは目に見えて変わります。


たったい一枚のアンケートでそれができることは先に触れましたが、そもそも月に一、二件の契約しかいただけない営業マンでは、お客様にアンケートをお願いできる機会もかぎられています。


そんな人でも無理なく自己肯定感を高める秘訣が、「小さな成功体験」です。


多くの営業マンは、いきなり大きな成功を夢見て挫折します。志を高くもつのは結構なことですが、理想と現実のギャップが大きすぎると「自分はなんてダメなんだ……」と心が折れてしまいます。


千里の道も一歩からというように、まずは自分にできることからはじめましょう。小さな成功をつかむきかっけは、身近なところにいくらでも転がっています。


たとえば新人時代の私は、お客様の前でうまく話せないというコンプレックスを抱いています。お客様の言葉にどうりリアクションしていいかわからず、場を白けさせてしまうこともよくありました。


そこで私は、先輩のすすめで「オウム返し」を試してみました。お客様が「A社の保険に入っています」と言えば私も「A社の保険ですか」と言い、「趣味は旅行です」と言われたら「なるほど、旅行ですか」と返す。営業のマニュアル本でもよく紹介されているベタな方法ではありますが、これはなかなか効果がありました。少なくともお客様の前でぶざまに固まって重い沈黙を招くようなことはなくなりました。


話し方に小さな目標を加えるだけで、小さな成功が生まれたのです。