第1966冊目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) [文庫] 三枝理枝子 (著)
- 作者: 三枝理枝子
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2012/11/15
- メディア: 文庫
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心に届くあいさつと届かないあいさつの違い
あいさつは何の為にするのでしょうか?
あいさつの効用は何でしょう?
あいさつはコミュニケーションの入り口ともいわれます。それは、あいさつすることがお互いの存在を認め合うことにつながったり、相手の心の扉を開かせることになったり、あるいは目を覚ます、元気が出る、モチベーションが上がる、一体感が生まれる、気持ちがリセットできる、といったような効果があると考えられているからです。
ですから、明るくさわやかな声で、自分から先に気持ちを込めてあいさつしたいものです。さらに、あいさつだけで終わるのではなく、プラスαの声かけがあると、よりいいでしょう。
ちなみに江戸しぐさでは、「おはようございます」「こんにちは」とあいさつした後に、「今日は暑いですね」「風邪が治ってよかったですね」などの言葉を続けることを「世辞を言う」といっていました。つまりお世辞とは、本来は人と人との距離感をなくす、一体感を醸し出すために必要な行為だったのです。
ところが現代では、「世辞」というとへつらうことのようにとられがちでう。そのせいか、多くの人は「世辞」を言いたがりません。昔の人は子供であっても、親の姿を見て、真似て、自然と「世辞」が言えていたようです。
今、どれだけの人が「世辞」を言えるでしょう。
とある研修先の部長は毎朝、あいさつにプラスαの声かけを続けています。
「○○さん、おはよう。最近もジョギングしてるの?」
彼に名前を呼んでもらい声をかけられると、気持ちがさわやかになるそうです。そして、朝の眠気が一瞬で吹き飛びます。この上司はちゃんと自分を見てくれている、存在を認めてくれると思うとうれしくなるからです。すると、その日一日の仕事のやる気にもつながります。
このように、一言添える毎日のあいさつのおかげで、まわりの人たちは「この人のためなら……」と思えるようになるのです。
ただし、あいさつをするときに注意していただきたいことが一つあります。それは「ながら動作」です。
「ながら動作」とは、パソコンを見ながら返事をしたり、テレビを見ながら勉強をするといったように、一つのことをしながらもう一つの作業をすることです。あいさつするときは、この「ながら動作」にならないように気をつけてください。
たとえばレストランに行ったとしましょう。
店員が予約表を見ながら目も合わせずに「いらっしゃいませ」とあいさつしたら、歓迎されているとはまったく感じないはずですし、うれしくありませんね。また、「ありがとうございました」と言いながらお釣りやレシートを渡されても、感謝の気持ちは伝わってきません。
つまり、ながら動作では相手の心にあなたの気持ちが届かないということです。
「いらっしゃいませ、○○様。お待ちしておりました。店の場所はすぐおわかりになりましたか?」
「○○様ありがとうございました。お口に合いましたでしょうか」
このようにしっかりと目を見て言葉を発してから、その後に動作をするように心がけてください。ながら動作はせず、優しい目元で「世辞」を伴う言葉を添えましょう。
先日、打ち合わせでうかがった会社で大変気持ちがよくなることがありました。
その会社の通路で社員の方とすれ違ったのですが、なんと、きちんと立ち止まって目を合わせ、「こんにちは」とあいさつしてくださったのです。
こういうときは、すれ違いざまに、歩きながら「こんにちは」「失礼いたします」と声をかけられることがふつうだとおもいます。それだけに、このときはとても礼儀正しく感じました。
しかも、一人だけではないのです。打ち合わせが終わり、帰るときにお会いした方も、一度立ち止まって丁寧にあいさつしてくれました。会社によっては何も言わずに無視する人も見かけるなか、大変好感を持ちました。
このような会社とぜひ、お取引したいと思いませんか?