第1965冊目 カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本) [単行本] オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


不快感に慣れる



この章では、カリスマの最大の障害を乗り越えるために有益なテクニックを学んできた。カリスマをさらに高めて熟練の域に達するためには、これから学ぶツールが役に立つだろう。このテクニックを身につければ、どんなに困難な精神状態でも、カリスマの状態に戻りやすくなる。最後の切り札のようなものだ。必要なときにこの切り札を使えると思っているだけで、確かな自信を持てるだろう。


このテクニックは、交渉やプレゼンテーション、社交的な場面など、パフォーマンスを発揮する際の武器となる。ただし、簡単には習得できない。私たちの原始的な本能に反するものだからだ。いったいどんな秘密兵器なのか。


それは、不快感に慣れることだ。


単純に聞こえるだろうが、決して簡単ではない。


あなたは飛行機に乗っていて、滑走路で離陸を待っているとしよう。窮屈なシートにベルトで縛りつけられている。機内のエアコンが故障していて、気温が少しずつ上昇し、空気がよどんでくる。汗が首筋をつたう。これ移乗最悪な状況があるだろうかと思っていたら、すぐ後ろの席で赤ん坊が泣きだした。あなたは不快感が募り、全身の緊張が高まって、苛立ちで頭がいっぱいになった。機内で読むものを入れていた持ち込み用のバックは、客室乗務員が遠くの棚にしまったから、気を紛らわすものもない。しかも、この状態がいつまで続くのかわからない。わかっているのは、自分の中に湧き起こる緊張が何の役にも立たないことだけ。この苛立ちをどのようにして食い止めればいいのだろう。


その答えは、意外にも、不快な感覚をとことん探究することだ。直感に反すると思えるかもしれない。しかし、そうした否定的な感情を抑圧したり、無視したり、力ずくで抑えたりするのではなく、本能的に避けたくなる感情と正面から向き合うことこそ大切なのだ。


肉体的な不快感がもたらす小さな感覚に集中すると、2つの効果がある。まず、今の状況に耐えられないという思いがあふれる前に、ほかに集中する対処ができる。さらに、目の前のことに集中するというプレゼンスを引き出しやすくなる。つまりこのテクニックは、かなり不快な状況でも、カリスマ的なプレゼンスを発揮するために有益なのだ。