第1967冊目 パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術 [単行本(ソフトカバー)] マーティン・ニューマン (著), 小西あおい (著)


パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術

パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術


声に抑揚をつける練習をしてみよう!


声の抑揚の使い方は、画家が絵を描くのと実は同じ原理です。


立体的な絵を描くには軽いタッチの筆づかいと、しっかりとした思いタッチの筆づかいが共存していなければなりません。軽いタッチだけで描かれた絵は美しいかもしれませんが弱い印象を与え、思いタッチだけで描かれた絵は粗野な印象を与えます。


声の使い方も同じです。


声を軽やかに高いトーンで発声すると、聞き手は次の言葉への期待感が煽られます。話の中で声のトーンが高く上がることで、聞き手は話の続きを聞く準備をし、声のトーンが低く下がることで、聞き手は話し手が意思を持ってその話を終わらせていることを認識します。


声を高く上げることで聴衆のアテンションを惹きつけ、話の最後に声を低く下げることで、落ち着いて自信に満ちた印象を与えることができるのです。


声の高低をうまく使い分けることで、話に変化を加えることが可能となり、話に彩りを添えることができるのです。歌をうたうように抑揚をつけることで、そこに描かれる物語には色彩と奥行きが加わります。


抑揚のない、同じトーンで描かれる物語は白黒でつまらない絵になるでしょう。


では、どのように抑揚を練習すればいいか、お教えしましょう。カラオケの練習もいいのですが、もっと簡単な練習法があります。


皆さんはディズニーの『白雪姫』に出てくる7人の小人が歌う「ハイ・ホー」という曲をご存知だと思います。歌の冒頭の「ハイ・ホー、ハイ・ホー」を歌ってみてください。


最初の「ハイ→ホー」は低い音から高い音に、1オクターブ、つまり8音上がっています。その次の「ハイ→ホー」は高い音から低い音に1オクターブ下がります。


この低→高、高→低を、まずは練習してみましょう。


「ハイ・ホー」を練習するだけでも、声の幅を体に覚えさせることができます。


さらに、どんな文章でもいいので、文章の最初の単語を「ハイ(低音)」の音で発声し、次の単語を「ホー(高音)」の音で発声、その次の単語を「ハイ(高音)」そして、その次の単語を「ホー(低音)」で発声する練習をすると、文章の中でピッチの変化を体感できます。単語ごとにピッチを上下させるのは不自然ですが、これはピッチの上下のトレーニング、声を上げたり下げたりする練習ですので、恥ずかしがらずに挑戦してみましょう!


では、東京オリンピック招致プレゼンでの抑揚の例をお話しましょう。


パラリピアン、佐藤真海さんのスピーチは自己紹介から始まりました。


「私の名前は佐藤真海です。私はスポーツに救われました」


この文章は自己紹介なので、抑揚もなく、あっさりと話すことも可能でした。しかし、彼女はパーソナルな話を伝えることで、スポーツの素晴らしさ、東京がいかにオリンピックを必要としているかを話さなければならず、話の冒頭から自分が自分であることへの誇りを持っていることを表現しなければなりませんでした。


そこで「ハイ・ホー」の原理で、「My(低)」→「Name(高)と名前という言葉を高音で発声することで、次にくる名前に興味を持たせ、「Is」はニュートラルな音なので、特にトーンは上げず、「Mami(高)」、楽しくエネルギッシュに名前は発声して、→「Sato(低)」の名字のところで声を力強く落とし、意思の強さを表現しました。


この最初の自己紹介だけで、聴衆は佐藤真海さんというスピーカーに興味を持ったはずです。


このように、声の高低差をうまく組み込むことで、短い一文であっても、聴衆のアテンションを惹きつけることができるのです。


ただし、やり過ぎは禁物です。すべての言葉に抑揚をつけると、聞きづらくなるどころか、下手なカラオケの歌を聞いているように耳触りになってしまうので気をつけましょう。