第1960冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール [単行本] ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・イェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール


完全な手本を示す


新しい言語を教えるとき、教師はよくその言語で授業をして、速く習得できるようにする。生徒たちが、語彙や構文理解の向上のために動詞の活用を練習したり、教科書の問題を解いたりすることのほかに、学んでいる言語にたっぷり浸かれるからだ。彼らは毎日その言語を聞く。教師がことばをつなげ、動詞の時制を使い、質問のやりとりをし、単語を発音するのを聞く。大きな目標は教科書のスキルを習得することだが、その言語自体で教えれば、生徒は教師の手本を吸収して、さらに多くのことを学べる。


これと同じように、あらゆるスタッフや専門能力開発ワークショップでも「没入」体験を生み出せる。ワークショップの目標がベストプラクティスの紹介でない場合でも(ない場合だからこそ)、手本にしてもらいたい事例を紹介するのだ。


たとえば、マエジャーの専門能力開発の目標が、部下のやる気を引き出して目標以上の売上を達成することだとする。まず個別に練習を始めるまえに、主催者側が参加者に対してやる気を起こさせるテクニックの手本を示す。ことばだけでなく、姿勢やアイコンタクト、口調にも気をつける。あらゆる機会に手本を見せるこの「スーパーモデリング」では、練習中に各人にフィードバックを与えて、フィードバックの手本も見せる。グループへのプレゼンテーションのしかた、プレゼンテーションでタイマーを使って時間を管理する方法などについても手本を示す。こうした追加のスキルを参加者が見聞きすればするほど、それらは深く浸透し、彼らの習慣になる。「スーパーモデリング」のスキルを強化する簡単な方法は、教える内容だけでなく、ワークショップの進め方そのものから何を学んでもらうか、よく考えることだ。


自明かもしれないが、スーパーモデリングでまちがえると、練習全体がまちがった方向に行ってしまう。スタッフといっしょに働いているときには、スタッフに手本を見せていると思わなければいけない。口調にしろ、話の進め方にしろ、スタッフにこうしてほしいと思うことを、そのまま手本として示さなければならない。たとえば、プレゼンテーションの手本を見えるとき、スタッフにはスライドの使い方に注目してほしいと思い、そのように伝えた(ショットをコールした)としても、実際には質の高いプレゼンテーション全体の手本を見せているのだ。モデリングにはふたつの選択肢がある――堅苦しくない場にして、学習目標を特定のテクニックだけに絞るか、スタッフに期待するあらゆることの手本を見せるからだ。スタッフが手本にしたがう場合には、スライドの使い方だけでなく、かならず口調や力の入れ方もまねする。くだけた調子で手本を見せれば、彼らもまいがいなくくだけた調子で練習する。危険なのは、大きな試合などの大事な局面で、練習したとおりに実演しがちなことだ。だからこそ、手本の質を監視することが重要になる。