第1958冊目 THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2010年 10月号 [雑誌]



河野英太郎

  • 一分も割けないほど忙しい人は存在しない


報・連・相(報告・連絡・相談)の基本は、早め早めに行うこと。そのことは、誰もが重々認識していることでしょう。


資料を作るとき、構想段階から「こんな方向でどうですか?」と逐一尋ねておけば、その都度、アドバイスがもらえ、的外れな仕事をする心配がなくなります。何かトラブルがあったときでも、できるだけ早く相談をすれば、手遅れにならないうちに対策が打てます。


しかし、現実には、報・連・相のタイミングが遅く、手遅れになる事態を招いている人が少なくありません。


私は、その最大の原因は、「履き違えたマジメさ」にあると考えています。


たとえば、上司に相談しようとしたら、「今、忙しいからあとにしてくれる?」」と言われた。多くの人は、「忙しいなら仕方ない」と引き下がることでしょう。また、「忙しそうだから。ひと段落つくのを待つか」「何度も聞いたら仕事の邪魔になりそうだから、明日聞こう」などと、必要な報・連・相を自重している人もいると思います。


マジメな人ほど、この種の?遠慮?をしがち。そのマジメさは、履き違えたものでしかないと私は思います。その遠慮によって、仕事が遅れたり、ミスが発生したりしたら、上司の仕事をちょっと邪魔するぐらいでは済まなくなるからです。


そもそも、部下の仕事が早く進むことは、上司にとってメリットのあることです。報・連・相の必要があるときは、相手に気を遣いすぎないほうが良いでしょう。「あとにして」と言われても、「一分でいいですから」と食い下がる。電車や飛行機に乗り遅れそうならともかく
そうでないときに一分も割けないほど忙しいなんて、この世にはいません。


このことは、上司だけでなく、取引先に対しても言えます。変に遠慮しすぎることはマイナスでしかないと肝に銘じてください。

  • 相手の情報や言葉に合わせて話をする


ただし、遠慮は無用といっても、ダラダラと話して相手を何分間も拘束していると、迷惑がかかります。コンパクトに話すことを心がけましょう。


まずは、結論から話すこと。結論だけ聞けば判断できることはたくさんあります。それなのに、余計な背景まで聞かされるのは、相手にとって時間のムダでしかありません。悪い報告だと、まわりくどい言い訳から話がちですが、余計に怒らせるだけです。


短い時間で相談をするには、〝エレベーターブリーフィング〟を練習するのも良いでしょう。これは、エレベーターの中で、忙しい上司から承認を得るための話し方です。


簡単に言うと、①主旨(判断してほしいこと)、②選択肢、③判断のポイント、④結論、⑤とるべきアクションの確認、という順番で話すのです。話し始める前に①②③まで話を組み立てておくと良いでしょう。


手短に話をするには、相手がどの程度まで話を把握しているのかを確認することも必要です。


以前、報告したらからといって、相手がそのことを覚えているとはかぎりません。にもかかわらず、「上司はわかっている」と勝手に判断して、べらべら話すと、「何を言っているのかまったくわからない」と戸惑わせてしまい、結局タイムアップということになりかねません。「経緯について、念のため説明させていただいたほうがよろしいでしょうか?」などと確認しながら話をするべきです。


新たな上司や取引先の担当者、普段あまり接触していない人に、報・連・相をする必要があるときは、言葉を相手に合わせることも重要です。