第1957冊目 THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 04月号 [雑誌]


  • 「外見の棚卸し」で自分のタイプを知る


初対面の際、八割の人が「相手の顔を見る」という調査結果があります。意思を表すといわれる目を始め、眉や口などのパーツ、そして顔全体に情報が集約されています。そのため、私はビジネスマンの方から「第一印象を良くしたい」という相談を受けたら、まずはその人の顔の印象分析から始めます。


人間の顔の印象は大きく四つのタイプに分けられます。縦軸を「ソフト」と「ハード」、横軸を「ウォーム」と「クール」としてマトリックスを作るとわかりやすいでしょう。


「ソフト&ウォーム」は、童顔で親しみやすい印象。このタイプの顔は、周囲の人がつい手を差し伸べて助けてあげたくなる雰囲気があります。「ソフト&クール」はシンプルな顔立ちで、落ち着いた印象を与えます。外見が真面目で堅実な印象なので職場では緻密さを求められる仕事を任されるタイプです。


「ハード&ウォーム」は、ダイナミックな存在感、感情豊かで元気な印象を与えます。ひと言で表すなら「体育会系」。打たれ強そうな印象なので、急な接待につき合わされたりするかもしれません。「ハード&クール」は、野性的な顔立ちで冷静な印象。強面で相手に緊張感を与えますが、「仕事ができそう」と思われやすいのもこのタイプです。


まずは、自分がどの顔立ちに該当するかという見た目の棚卸し」をしてみてください。意外と自分では判断がつかなかったりもしますので、他人に意見を聞いてみてもよいでしょう。

  • 「童顔にオールバック」はちぐはずなだけ


なぜ自分の外見を知る必要があるかといえば、人は相手に外見どおりの行動を期待するからです。相手の外見が「ソフト&ウォーム」なら親しみやすく人懐っこい振る舞いを、「ソフト&クール」なら真面目で落ち着いた振る舞いを期待されます。ところが、その人の行動が期待と違うと、相手は裏切られたと感じます。かといって、ソフトな外見の人が内面のギャップを埋めようと上から下まで全身ダークな色の衣装では顔とのギャップで違和感が生じ、好感度を上げることにはなりません。


たとえば「ソフト&ウォーム」の人が、頼りがいを出そうとヘアをオールバックにしたり、ヒゲを生やしたり、ダブルのスーツを着たりする場合。顔が子供っぽいのに、身だしなみや服装を過剰に大人っぽくしてもちぐはずなだけで、「無理して背伸びしている」という痛々しい印象を与えてしまいます。また、「ハード&クール」の強面タイプが、優しい印象に見せようとしてピンクのネクタイをしめたりするのも逆効果。赤頭巾ちゃんの衣装を着た狼のように、違和感とともに、より怖い印象を周囲に与えてしまいます。


また、注意したいのがメガネ。どんなメガネをかけるかで顔の印象を変えることはできますが、童顔の人が存在感のあるシャープなメガネをかけると「ちびっこギャング」のような印象に、あるいはハード&ウォームな人が太縁のセルフレームをかけるとあまりに暑苦しい印象になってしまいます。このようにタイプと正反対の服装や身だしなみ、あるいはタイプをさらに強調しすぎる装いは、顔の印象のマイナス部分を強調してしまう可能性があります。そこを認識したうえで、自分の外見をマネジメントするという発想が必要です。

  • 白シャツ+無地ネクタイまずは「王道」を極めよ


「ソフト&ウォーム」は無頓着な格好でいると頼りない印象に、着飾りすぎると滑稽な印象に、「ソフト&クール」は無頓着で覇気がなく、着飾りすぎると気取った印象になってしまいます。「ハード&ウォーム」は無頓着でも着飾りすぎても暑苦しい印象、「ハード&クール」が無頓着な格好では粗野な印象、着飾りすぎると派手でわがままな印象になってしまいます。


それを避けるには、「無頓着ではダメ、かといって着飾りすぎない」外見を心がけてください。そのためには、スーツは自分の体型に合ったサイズを着用すること。なぜか中高年の人は大きめのスーツを、若い人は反対に小さすぎてパツパツのスーツを着る傾向にありますが、いずれもマイナスな印象につながります。既製品のスーツでも、肩を合わせをきちんとして、必要なら店でお直しをしてもらいましょう。


そして、スーツの下は「白シャツ」が基本です。真っ白でなくても、限りなく白に近いブルーやピンクでも構いません。


なぜ白がいいかというと、スーツやネクタイとの合わせがラクだからです。カラーシャツや柄シャツ、襟だけが白いクレリックシャツは組み合わせ次第ではとてもおしゃれです。ですが、色柄のシャツの上に、さらに色柄のネクタイを合わせてセンスよく見せるには非常に難易度が高く、初心者にはお勧めできません。しかも日本人はシンプルな顔立ちが多いので、胸元のVゾーンに色や柄を使いすぎると、顔の印象がぼやけてしまいます。


やはり最初は体型に合ったダークシャツに合うネクタイ。この基本を実践してください。ほんとうにおしゃれな人ほど、「王道」を極めているもの。白シャツ一つでも、生地の種類や衿の幅などさまざまな種類があります。基本をとことん試し尽くして、自分のものにすることこそが、王道を極めるということです。


そして王道を極めてから、改めて自分の好みを少しずつ加えて、センスを磨き、個性を表現すべきです。とくに四十代からは、外見でも周囲から抜きん出ることが求められます。カラーのシャツや柄物のネクタイで自分らしさを表現するのもいいでしょう。ただしそれは、自分の基礎となるものをしっかり固めたからこそなせる技。基本を押さえず個性を出そうとしても失敗するだけ。まずは王道をしっかりと極めてください。


人の内面は年を追うごとに磨かれ成長していくのに、外見は放ったらかし、というのは考えてみればおかしな話です。二十代の頃と四十代で同じ髪型であるべきではありませんし、メガネもできれば三年ごとには買い替えたいものです。中高年の男性はあまり鏡を見ないようですが、プレゼンの前の企画書と同じように鏡の中の自分を見て、今のステージに合わせた外見をマネジメントするという意識を持っていただきたいと思います。