第1388冊目 THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 11月号 [雑誌] [雑誌] THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 11月号 [雑誌]出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2013/10/10メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る

  • 「見た目」を意識する


結局、人は見た目で相手を判断する!?


近年、「見た目重視」の傾向がより強まっているのを感じます。「人は見た目で判断してはならない」という建前に対して、「やっぱり人は見た目に左右される」という本音が表に出てきた、ということでしょう。私の著書『人は見た目が9割』が、お陰さまで百十三万部のベストセラーとなり、今年七月に刊行した新著『やっぱり見た目が9割』も好評なのも、その流れによるものだと思います。


長らくコミュニケーションの手段は言葉だけだと思われてきました。しかし、人は実際には言葉だけでなく、言葉以外の情報のやり取りでお互いの意図を察し合い、お互いの意図を通じ合わせています。


私は見た目(非言語情報)を、?外見(体型、容姿など)、?動き(姿勢、仕草など)、?表情(顔の向き、目の動きなど)、?声(高さ、大きさなど)、?空間(相手との距離、居心地など)、?色と匂い、という七つに分類していますが、この七つの要素が話の内容と同様、あるいは内容以上に相手の印象を左右するのです。


言い換えれば、言葉により差別化が難しくなっているのです。政党のマニフェストは役立たなくなり、むしろ外見で政治家を判断するような風潮すらあります。良し悪しはともかく、それが事実である以上、「非言語コミュニケーション」に意識を向けるざるを得ないのです。

  • あなたの些細な癖も人は意外と見ている


実は日本人はもともと、この非言語コミュニケーションに長けた国民です。たとえば何十年も連れ添った夫婦の場合、夫が「おい」と言って顔を向けるだけで、妻が何も言わずに醤油の瓶を差し出す。これは言葉よりも、表情や立ち居振る舞いで物事を伝えているのです。


ですが、ビジネスパーソンはこれまで非言語的な要素にあまり意識を向けてきませんでした。自分では気づかない癖もその一つです。貧乏ゆすりや、指をポキポキと鳴らす癖……本人は無意識でも、これによって、神経や感情を逆なでされる人もいます。些細な癖も、人は意外によく見ているものです。


たとえば、まばたきが多い人は自信がなく思われがちです。それを直すだけでぐっと印象はよくなりますが、自分でそのことに気づくのは難しいもの。「人のふり見て我がふり直せ」とはいえ、実際にはなかなかできることではありません。


そのときに大事なのは、外からそれを指摘してくれる人を持つこと、そして尊敬できる人を見つけ、その人の立ち居振る舞いを参考にすることです。


私も、以前は非言語コミュニケーションを疎かにしていました。もともと演出家や劇作家という黒子の立場だったため、人前で話す機会も少なく、自分がどう見られるかも気にしていませんでした。


しかし、本が売れて講演会などで話す機会が増えるにつれ、いろいろな方のご指摘やご意見を頂戴するようになり、少しずつ変わってきました。


だからといって、もともとの内向的な性格が変わったわけではありません。自分の性格はそう簡単に変えられませんし、無理に明るく振る舞うのも不自然です。余計に軽く見られてしまうのがオチです。


ただ、あるとき気づいたのです。内向的な性格は変えられないけれども、人前で堂々と話したほうが自分の考えが伝わりやすいのであれば、私は「非言語コミュニケーションの伝道師」の役割を演じればいいのだと。役者が今日は弁護士を演じ、今日はホームレスを演じるように、私も人前で話すときは伝道師を演じる。伝道師を演じるにあたっては、自分が尊敬できる恩師の話し方や立ち居振る舞いを参考にしました。


役を演じることは、普段誰もがやっていることで、決して難しいことではありません。会社では課長の役を演じながら、家庭では夫の役を演じている人もいるでしょう。見た目を変えることも「演じること」だと考えれば、それほど難しくはないのではないでしょうか。

  • 「話しかけないでオーラ」は、小物の証拠


非言語コミュニケーションというと、表情や立ち居振る舞いなど、自分から発信することにばかり意識が向きがちです。しかし、非言語コミュニケーションを円滑に進めるには、相手の表情やしぐさなどを観察し、相手が求めていることを受信する力が不可欠です。


自分が話していることを相手が理解できていないとき、それは表情やしぐさに表れます。それにすばやく気づいて、「ご存知だとは思いますが、これは……」とさり気なく説明できる人こそが、受信力の高い人です。このような人は、心地よい人間関係を維持したまま、相手とのコミュニケーションを深めていくことができます。


受信力の低い人には、往々にしてある特徴があります。それは、しばしば「話しかけないでオーラ」を発しているとうこと。周囲との関わりを避けようとするのは、自分だけの時間が心地よいからです。自分の席から動こうとしない上司、部下を自席に呼びつける上司も同様。本人は威厳を見せているつもりでも、自分の縄張りから出ようとしない人は、「小物」の印象を与えるだけです。


反対に、常に話しかけていい雰囲気を与えながら、ときには自分から部下の席を周り、「何でも私に相談しなさい」と言える上司こそ「大物」です。こうした受信力の高い人は、部下からも信頼されます。


相手に対して心を開く姿勢が、大人に見られるということでもあるのです。