第1376冊目 「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント [単行本] ジェリー ワイズマン (著), Jerry Weissman (原著), 武舎 るみ (翻訳), 武舎 広幸 (翻訳)


「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

「心を動かす」プレゼンテーション―実例から学ぶ80のヒント

  • 作者: ジェリーワイズマン,Jerry Weissman,武舎るみ,武舎広幸
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2012/12
  • メディア: 単行本
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「イチジクの葉」はやめよう プレゼンテーションで効果的な姿勢


オバマ大統領は二〇一一会計年度の予算教書演説に際し経済諸問委員会の面々に同席を求めました。下に、その折りにホワイトハウスで撮影された写真を掲載します。左から右へ、クリスティーナ・ローマー経済諸問委員会議長、ティモシー・ガイトナー財務長官、オバマ大統領、ピーター・オルザグ行政管理予算局長、ラリー・サマーズ国家経済会議委員長です。


諸問委員が四人ともウエストよりやや下で左右の手を組んで立っていることに注目してください。プレゼンテーション・コーチングの業界ではこの姿勢を「イチジクの葉」と読んでいます。「イチジクの葉」には、いくつかのバリエーションがあります。「ウエストより上の辺りで両手を組む」「胴体の中程で片手を握る」「片手または両手をズボンのポケットに入れる」といったものです。


以上どのバリエーションにも共通する要素があります。それは上腕が脇に押しつけられることと、前腕と手が体の前で保持されることです。大統領の諸問委員であれ、皆さんのようなプレゼンテーションの発表者であれ、とにかく発表者が(公の場で人目にさらされながら立っているなど)ストレスを感じる立場に置かれると、生命の維持に必要不可欠な臓器を守ろうとする反応が本能的に出るのです。「ボディ・ラップ」とも呼ばれるこの反射行動は、恐怖に対する動物の自己防衛反応である「闘争・逃走反応」の表れであり、だれにでもよくあることです。いや、だれにでもよるあるどころか、人間は皆、生まれる前からこの姿勢を取っています。「ボディ・ラップ」は本来、胎児の姿勢の延長線上にあり、したがって人間の心身に深く刻み込まれた習慣なのです。


ということはつまり、私たち人間は人前に出れば必ず事故防衛的な姿勢を取ってしまう運命にあるということなのでしょうか? そんなことはありません。「ボディ・ラップ」としないようにするためのコツはいろいろあります。ここではその中から二つ紹介しておきましょう。一つは軍隊の兵士がよくやる「休めの姿勢」。左右の足を肩幅に開き、両手を背後で組んで直立する姿勢です。この姿勢をやると、両肩が後ろへ引けて背筋がピンと伸びるので、自信に満ちた落ち着いた印象を見る者に与えます。ただしこの姿勢は話していないときにしか使えません。例えば会社で正式な写真撮影をするときや、一人ずつ話すグループ・プレゼンテーションで、話していない人がとる姿勢です。


さて、「ボディ・ラップ」をしないようにするための二つ目の、そして非常に効果的なコツは、手や腕で表情豊かなジェスチャーをして、言葉による説明を補う、というものです。この方法には、そもそも「ボディ・ラップ」を引き起こす原因そのものである緊張を和らげてくれる効果もあります。ただし、どんなジェスチャーをするか前もって計画を立てたり演出したりするようなことがあってはなりません。ロボットのようにぎこちない動作になってしまう発表者があまりにも多いからです。自然に出てくる動作で十分です。


腕で体を包む「ボディ・ラップ」の姿勢でプレゼンテーションをすると、事故防衛的な心理状態にあるという印象を与えてしまいます。一方「休めの姿勢」をとり、話すときは自然なジェスチャーを交えるようにすれば、観客の注意を惹きつけておくことができます。