第1359冊目 パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術 [単行本(ソフトカバー)] マーティン・ニューマン (著), 小西あおい


パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術

パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術


アイコンタクトよりアイコントロールが重要!


では次は「目」の話に移りましょう。


ボディランゲージの重要性をあまり認識していない人に限って、よくアイコンタクトの話をします。でも、アイコンタクトだけに頼るのは、危ない考え方です。アイコンタクトを「睨まれた」と感じる人もいますし、「常に聴衆と目線を合わせていなければ」というのは余計なプレッシャーにつながります。


クライアントの中に、よく「私、アイコンタクトが下手なんです」と言う方がいますが、私は「大事なのはアイコンタクトではなく、アイコントロールです」と指導しています。


「アイコントロール」とは、意図的に自分の目を動かすことです。


私たちの目は意外と無自覚のうちに動いています。例えば、何かの物音がすれば、そちらの方角を見ます。動いているものがあれば、つい見てしまいます。それらは人間の自然な反応です。アイコントロールは、物事に反応して目を動かすのではなく、意図的に目を動かし、目の動きで自分の意思を相手に伝えるのです。大勢の聴衆の前で話す場合のアイコントロールの例を挙げましょう。


ミツバチが花畑で密を吸うシーンを思い浮かべてください。


ハチは多くの花の中からひとつの花を選んで飛んでいき、それに止まって密を吸います。そして少し経つとまた違う花に行って止まって密を吸いますよね? それに近いイメージで、アイコントロールをするのです。


大人数を漠然と見回すのではなく、数人のターゲットを決めて、その人たちと目線を合わせてアイコンタクトをとり、それを繰り返していくのです。たくさんの人たちをただ漠然と見ることは、結果的に誰ひとりともアイコンタクトをとっていないことになります。それに対して、ミツバチの方法でアイコントロールすれば、一対一の目線でコミュニケーション=アイコンタクトがとれるので、話す側も話しやすいし、聞いている人たちにも、より内容が入っていきやすいのです。


別の例を挙げましょう。


誰かと会話しながら自分の考えをまとめるとき、目を閉じる行為は、相手とのコミュニケーションをその間断絶するため、あまりよい印象を与えませんが、それでもちょっと目を動かすことが必要になる場合はあります。


人は「見えない辞書」を頭の中に持っていて、その辞書はだいたい目線の斜め45度上にあるようです。人によっては右上だったり左上だったりするようです。


言葉が出てこないとき、ふさわしい表現を模索するするときに、頭上にある「見えない辞書」を無意識に見るのは、いわざ普通のことなのですが、相手から視線を逸らすことになり、不安そうに見えたり、自信がないように見えたり、場合によっては不快感を与える可能性があるため、あまり頻繁に繰り返すことは避けたほうが賢明です。


そこで重要になってくるのが、アイコントロールです。


アイコントロールによって、相手に不快感を与えずに「見えない辞書」へたどり着く方法があるのです。それは自分が意識することによって、あえて主体的に辞書を見にいく方法があるのです。それは自分が意識することによって、あえて主体的に辞書を見にいき、戻すことです。無意識の動作から、コントロールされた動作に変えるのです。「ちょっとお待ちください」などと言い換えれば、より丁寧かもしれません。


ちゃんと考えていますよね、ということを意図的に目線を戻すことによって示すのです。


要は、意思と意図を持って目線を動かしているのと、ただ単に目線を散らしているのとの違いです。目線を戻すのが重要なのです。


目線を戻さないまま考え込んでいると相手に不安に思われてしまいますが、また目線を元通りに相手に戻すことによって、「ああ、考えているだけなのだな」と理解してもらえます。


あなたが目線をきちんとコントロールできていれば、会話をしている相手も安心して見ていられます。目線があらぬ方向をさまようことを、英語で「目がシフトする=シフティ」と言います。「シフティ」とは「嘘をついている」「信じられない人」という意味です。「目が泳ぐ」という日本語も似たようなニュアンスがあると聞いています。


目の動きは自然にまかせるのではなく、意識してコントロールすることが重要です。


「スピーチで大切なのはアイコンタクトだ」と思い込んで、ただ目を合わせさえすればいいと思っている人がいますが、それは目線をコントロールすることとは天と地ほどの差があるのです」