第1316冊目 モテる技術 (ソフトバンク文庫) [文庫] デイビッド・コープランド (著), ロン・ルイス (著), David Copeland (著), Ron Louis (著), 大沢 章子 (翻訳)


モテる技術 (ソフトバンク文庫)

モテる技術 (ソフトバンク文庫)


心遣いを示す態度


つき合っている女性との関係を維持するために何かをするとき、あなたは行動主義心理学で言う「強化」を行っている。「強化」とは報酬――つまり心地良くさせるもの――のことで、被験者は、ある行動をすることによって、あるいはある感情を持つことによってそれを手に入れる心地よさを感じる。たとえば、犬の名前を呼んで、犬が来たら褒美を与えるようにすると、あなたが呼べば来るという行動を強化することができる。そのうちに犬は、あなたに呼ばれれば喜んで来るようになる。あなたに従うことによって、自分の好きな報酬がもらえることがわかるようになるからだ。


ここで気をつけるべきことは、犬が名前を呼ばれて来るたびに、欠かさず褒美を与えていると、そのうちい犬が怠けるようになるということだ。犬はこう考える。


「ふん、何を急ぐ必要がある? 都合のいいときだけ行けばいいのさ。どうせ褒美はもらえるんだ」


欠かさず褒美を与え続けていると、そのうち褒美の効果がなくなってしまうのである。


女性との関係のおいても、これと同じことが起こることに、おそらくあなたも気がついているだろう。あなたは、あなたが大切な存在であることを知らせるために、誰かから尽くされ続けた経験があるだろうか? たとえばこう考えてみよう。ある朝、会社に着いたあなたが自分の席に着くと、思いがけず、職場の誰かがおいしいコーヒーを淹れて持ってきてくれた。おそらくあなたは、自分がとても大事にされていると感じ、その日一日中、その人の姿を見るたびに、幸せな気分になるだろう。その人の姿を見ると、コーヒーを出されたときの良い気分を思い出すようになるからだ。


それでは今度は、その人が毎日、時間仕掛けのおもちゃのように正確な時間、それも一日も欠かさず、コーヒーを持ってきてくれたとしたらどうだろう? あなたは、最初はおそらく感謝するだろうが、だんだんありがたみが薄れ、ついにはまったくありがたみを感じなくなってしまう。コーヒーの濃さが自分の好みと違うと文句を言ったり、その女性または男性が、たった一日来なかったからといって、怒り出すかもしれない。いつも贈りものをもらうことに喜びを感じていたあなたは、しだいにそれを自分の生活の一部だと考えるようになり、本来与えられるべきサービスを受けているだけとさえ感じるようになるのだ。常に一定の形で強化を続ければ、こうなるのも当たり前のことなのである。


もしもあなたが、山のようなプレゼントや注目を女性い浴びせかけ続けているのなら、コーヒーの例と同じことが起こる危険性がある。もちろん最初は、継続的に強化することは重要なことだ。あなたを見れば、幸せな気分になるように、女性を習慣づけることができるからだ。しかし、しばらく続けたら、贈りものをすることや、注目することの効果がまだあるうちに、贈りものをする機会を少し不規則にしてみるといい。これは、行動主義心理学で言うところの「強化スケジュールの変動」である。毎週欠かさず、あるいは毎日にように花をプレゼントするのはやめる。ちょっとしたプレゼントも、いつもは渡さない。決まった時間、決まった日に、彼女の前に姿を現すのはやめる。あなたは、彼女を良い気分にさせるためのスケジュールを変えるのだ。その方が、彼女にとっても、あなたとの恋愛がいつまでも刺激的で新鮮に感じられる。


トムは、この強化スケジュールの変化をうまく利用した。


「女性とつき合い始めたばかりの頃は、少々無理をしてでも、女性を喜ばせるために尽くします」


とトムは語った。


「けれども、そのうちに、彼女のために何かをする回数を、少し減らしても大丈夫だとわかるようになるのです。ときどき、彼女を良い気分にさせるのを忘れなければ、会うたびに特別の贈りものやプレゼントを用意しなくても、うまくいくものなのです」


強化スケジュールを変えてみれば、あなたはもっとモテるようになる。