第1309冊目 モテる技術 (ソフトバンク文庫) [文庫] デイビッド・コープランド (著), ロン・ルイス (著), David Copeland (著), Ron Louis (著), 大沢 章子 (翻訳)


モテる技術 (ソフトバンク文庫)

モテる技術 (ソフトバンク文庫)


支払いはあなたが


世の中には不器用な男がいるものだ。しかしボブは、不器用でドジなでけでなく、しみったれだった。自分のためにも、女性のためにも、そして誰のためにも金を使いたがらない男なのだ。


「セックスできなならムダ金を使うことになる」


とボブは言う。


「苦労して稼いだ金をどうして女に注ぎ込まなくちゃいけないんだ?」


しかし、実はボブがこれほどモテない理由の一つは、彼が女性のために投資しようとしないことなのである。ボブはただ、女性が身を投げ出して、セックスしてくれと哀願するのを待っているだけで、女性のために何かしようとはこれっぽっちも考えていないのだ。著者は何も、女性のために大金を注ぎ込めと言っているわけではない。それは愚かでバカげたことだ。ただ、女性とつき合うためには、ある程度の負担は覚悟する必要があると言っているだけである。勝負デートの趣旨は、女性を楽しませ、わくわくさせ、ロマンチックな気分と大切にされている気分を味わわせることだ。その一つの方法が、デートの費用を持つことなのである。


映画に出かけたとき、たった二〇ドルを出し渋ることによって、ボブは墓穴を掘り、成功のチャンスを逃してしまう。どちらが支払うかにこだわってケチなことを言い、女性をうんざりさせてしまうのだ。同じ間違いを犯す男は多い。女性のために支払うとき、あなたは気前の良さをアピールすることができる。あなたには、男の役割を喜んで果たそうという気があると伝えることができるのだ。そして、大部分の女性は男に支払ってもらうことを当然と考えていて、支払いをしない男のことを軽蔑する。ことの不平等性について、あなたが望むなら一日中議論を繰り広げて下さっても構わない。あなたの考えの正しさを永遠に主張し続けることもできるだろう。それはそれで結構だ。しかし、今、目を向けるべきことは、著者のインタビューに答えたすべての女性が、男性に支払ってもらいたいと考えていることなのである。


ただし、あなたが懐寂しいであったとしても、くさる必要はない。デートでは、必ずしも大枚をはたかなければいけないわけではないのだから。思い出に残るようなデートの計画を立て、自らデートを演出することの方が、デートにお金をかけることよりずっと大切なのだ。たとえば、入場無料の美術館を見てからの池のほとりを散歩するコースを選べば、素晴らしくて思い出に残る、しかもお金のかからないデートを楽しむことができる。すでに気心が知れた仲であれば、レンタルビデオの映画を借りてきて、彼女のために夕食を作ってあげるのもいいだろう。また、近くの街へ繰り出して、大通りでウインドー・ショッピングをする手もある。どれもみな安上がりなプランばかりだ。大切なことは、彼女に期待するのではなく、あなたが彼女のために計画を立て、自分が責任を持ってデートを盛り上げようとする態度なのである。


マレーは、大学で園芸学を専攻していただけあって、植物にとても詳しかった。大学では森林の生態を調査していたため、近所の植物園にある木やかん灌木や植物の名前をほとんどすべて言い当てることができた。そこでマレーは、ベスを植物園に連れて行くことに決めた。いつだったか、彼女が外国の島や植物や木が好きだと言っていたのを思い出したからだ。マレーは、植物園こそ二人でのんびり歩き、心を通わせるのに格好の場所だと考えた。そのあと二人で昼食をとり、そこからチョコレート工場へ行く予定だ。デートの費用は締めて一五ドル前後になりそうだ。二人はロマンチックな時間を過ごし、忘れわれない思い出作りができるだろう。


一方ハワードはデートの達人だ。これまでにデートの相手に不自由したことは一度もない。どこへ行ってもデートのお相手はいるのだ。そのハワードが、ここ何円もかけて書きためてきたものがある。彼自身も厳守してきた。デートの原則だ。その中の一つが四〇ドルの原則である。勝負デートでは、四〇ドル以上は決して使わないこと、という決まりなのだ。つまり、ハワードは事前にデートで使う額の上限を決めておき、それ以上は絶対に使わないようにしていたのだ。この原則のおかげで、ハワードは、がっくりしたり、腹を立てたりすることがないのである。


あなたもぜひ、ハワードを見習って同じようにしてみるといい。あらかじめ一定の額を決めておいて、その予算以内に収まるようにデートの計画を立てるのだ。ギャンブルをする場合も、事前に損失額の上限を決めておき、それ以上は絶対損しないようにする客は、カジノにとって歓迎すべき客だと言われる。彼らは分相応の賭けごとをし、ブラックジャックのゲーム台で勝負を賭ける男たちのように、不可能な夢を追いかけて自分を傷つける真似をすることではない。そしてそれは、勝負デートにも当てはまることだろう。もしもデートがうまくいかず、心が通い合わないときには、無理に結果を出そうとしてはいけない。悪くなる一方の雰囲気を何とかしようして、どんどん金を注ぎ込むようなバカな真似もしないように。それは自暴自棄の振るまいで、自信に満ちた男のすることではないし、そんなことをしても何の役にも立たないのだ。金を出したからといって、物事がうまくいくことはない。おそらく、気まずさばかりが増して、目的には少しも近づけないはずだ。


勝負デートの費用は男性が持つのが望ましいとは言ったが、だからといってデートの費用さえ出せば、ロマンチックなムードを作り出し、それを持続させる努力をする必要はないのだ、などという愚かな考えを持ってもらっては困る。金が、必要な努力の代わりをしてくれることはないのだ。やはりあなたは、彼女に触れ、彼女を虜にし、心の絆を育て、それ以上にも多くのことをしなければならない。たとえば、女性を超高級レストランに連れて行けば、彼女は感激するだろうが、もしもあなたがロマンチックな雰囲気作りをしなければ、彼女はあなたをただのかもだと見なし、うまく取り入ってあれこれ買わせようと考えるのがオチだろう。つまりバランスが重要だということで、あなたは女性のために支払った上で、女心を惹きつけるさまざまな努力をしなければならないのだ。