第1291冊目 人生を変えるマナー [単行本(ソフトカバー)] 三厨 万妃江 (著)


人生を変えるマナー

人生を変えるマナー


「ひと言をそえる」を心がける


キャリアが上がると、部下や後輩に仕事を「依頼」する機会が増えます。


上司・先輩になったら、「頼み上手」になりましょう。


「頼み上手」になると、あなたの仕事の効率は上がりますし、部下や後輩が力を発揮できるよいチャンスにもなります。


また何よりも、自分で抱え込まなくてもよいので、自分自身も時間に余裕ができ、新しいことにチャレンジしたり、周りに目配りしたりする時間が持てます。


このように、「頼み上手」になることは、上司・先輩の役割を果たすための大切なスキルなのです。


では、「頼み上手」になるにはどうしたらよいか、考えてみましょう。


たとえば、部下に、


「始業は9時だけれど、明日は8時半に出社してほしい」


と依頼するとき、あなたならどのように言いますか。


「明日○○があるので、8時半に来てください」


「少し早くて申し訳ないけど、明日○○があるので、8時半に来てください」


この二つであれば、後者のほうがいいでしょう。


後者には、「相手の立場を思いやる気持ち」がひと言そえられています。


あるいは一歩進んで、このような言い方はいかがでしょうか。


「少し早くて申し訳ないけど、明日○○があるので、8時半に出社してくれるとうれしい」


「朝早いのは大変だと思うけど、○○さんに8時半に出社しれもらえると助かるわ」


これなら、部下も「少し朝早くてもがんばるぞ!」とやる気になります。


あなたの気持ちを伝える「うれしい」「助かる」などの言葉をそえることによって、相手の心が動くのです。


仕事を頼むときは、「相手を思いやるひと言」や「自分の気持ちを伝えるひと言」をそえることが基本です。


次に、部下が気持ちよく仕事を引き受けたいと思うような「仕事を依頼するコツ」について考えてみましょう。


①相手の状況をよく観察する
依頼することが下手な人の原因の一つは、相手の状況を考えず依頼することです。


相手の仕事の状況・心理状態を観察し、タイミングを見計らって依頼することが「頼み上手」といえます。


「それほど仕事が立て込んでいないようだ」「イライラしている様子もなく、いつもどおり仕事に取り組んでいる」など、いい意味で「顔色を見る」ようにしましょう。


②手間をかけることに配慮のひと言をそえる
「急なお願いで申し訳ないけど」「○○の案件が進行中のところで悪いが」など、相手の状況や気持ちを推し量るひと言を付け加えるだけで、部下の受け取り方が違います。


「自分状況を理解してもらえているが、あえての依頼なのだ」とわかるからです。


部下から「忙しいから無理です」と返されないように、「ひと言そえる」習慣をもちましょう。


③仕事をしてもらいたい期日を伝える
納期をはっきり伝えましょう。


「手が空いたら」とか「時間があるときに」など、あいまいな言い方をする人がいます。


こららは遠慮する気持ちからの言葉ですが、部下が言葉通り受け取ると、本当に「手が空いたとき」しか取り組みませんし、「時間がない」ときは、取り組むのがかなり後回しになることも考えられます。


依頼したあなたからすると、「なぜもっと早くやってくれないのだ」と思うかもしれませんが、これはあんたの言い方があいまいで、部下には重要度が伝わってこないからなので、仕方がないのです。


部下に配慮するあまり、余計な気を回しすぎてはいけません。


むしろ、シンプルに納期を伝えたほうが、部下も段取りよく仕事が進められるのです。


④依頼にいたった理由を伝える
納得して気持ちよく仕事をしてもらうために、依頼の理由も話すとよいでしょう。


依頼の仕方について例示してみます。


「今回の展示会は、お客様に弊社の主要商品を知っていただく大切な機会です。ドリンクサービスコーナーでは、お客様にくつろいでいただけるようなサービスメニューを取りそろえ、スタッフも笑顔で応対できる人を人選して、おもてなしできるように企画してみてください。あなたの日頃の気遣いの様子を見込んで、お願いしますよ。企画書は○月△日までにお願いしますね」


以上のように、理由やその仕事の目的を伝え、「あなたを頼りにしている」と、背中を押すひと言をそえ、気持ちよく取りかかれるように依頼しましょう。


「いいから、やって!」とか「指示だから従いなさい」など、言葉には出さなくても態度に出ていれば、部下のやる気はなくなってしまいます。


ここで紹介した四つのことは、どれも簡単に実行することができます。


相手が気持ちよく行動できるような「頼み上手」になりましょう。