第1276冊目 小泉進次郎の闘う言葉 (文春新書 922) [新書] 常井 健一 (著)


小泉進次郎の闘う言葉 (文春新書 922)

小泉進次郎の闘う言葉 (文春新書 922)


部隊名を諳んじる


遊説先では災害救助に尽力した地元の部隊名を空で言う。


「苫小牧でも登別でも最近、猛吹雪で停電が起きました。あの時に活躍したのも陸上自衛隊北部方面施設隊です。残念ながら政治家はあの震災で信頼を失いました。その一方で、信頼を大きく勝ち得たのが自衛隊でした」(一二年一二月三日 苫小牧市


地元・横須賀では、自衛隊の存在意義をさらに強調する長い演説を行っている。


「震災で政治家は信頼を失ったけれども、信頼を獲得するたのが自衛隊のみなさんでした。私がたびたび足を運んでいる一つに岩手県大槌町があります。町長さん津波で亡くなりました。町の役場の約四〇名も津波で亡くなりました。そこに、私が行くたびに会う六〇代の女性がおります。一人で仮説住宅にお住まいです。おそらくこの冬も私がお訪ねした仮設住宅の中でお過ごしだと思います。


その方が、こう言われたんです。『小泉さんの地元て横須賀ですたよね? 自衛隊いますよね?』『いますよ。陸海空全部いますよ』『ぜひ自衛隊のみなさんにお伝え頂きたいことがあるんです。いかに自衛隊のみなさんが、大槌のために努力してくれたか』。震災直後の人命救助、その後の遺体捜索、そして復旧活動。その全てが一段落しちえ、大槌に駐屯していた自衛隊の部隊が撤収した。その方は、こう表現していました。『あの日、大槌の街が泣きました、大槌の空が泣きました。どうか自衛隊のみなさんに、私の代わりに、ありがとうと伝えてください』と。


自衛隊のみなさんの、日々の弛まぬ訓練が、あの東日本大震災でいかんなく発揮されたのです。横須賀には自衛隊の人たちだけじゃなくて、ご家族の方々が多くお住まいです。あの大震災の時、その隊員を待っている多くのご家族のみなさまがどれだけ心配され、苦しい思いをされたか。奥様方に『無理をしすぎじゃない?』と声をかけられ、『今無理しないでいつ無理するんだ。自衛隊はこういう時のために訓練をやっているんだ』と任務に向かった隊員がどれだけいたことか。


あまり日が当たらない活動でも、日々、日本の安全のため、国防のため、二四時間三六五日自分の任務を全うしているその隊員のみなさんんお目の前に立って、激励のご挨拶しかできないけど、それをやることは、国民の代表である政治家の最低限の役割だと思っています。自衛隊の方々とあまり接点がない多くのみなさんに、自衛隊の役割の重要性、日々の努力、その姿を伝えていくことが、陸海空自衛隊と在日海軍の基地を抱える横須賀選出の衆議院議員の勤めである。そう考えてまいりました」(一二年一二月一日)


進次郎氏の自体隊への思いの強さは、生半可なものではない。陸上自衛隊の基地がある多賀城市では、大宅賞作家・杉山隆男氏が、東日本大震災で人命救助に奔走した自衛隊の活動を描いた『兵士は起つ 自衛隊史上最大の作戦』に触れながら、こう語っている。


「駐屯地が津波で被害を受け、家族とも連絡がとれない中で、救助にあたった自衛隊のみなさんのことは、十分に語られていません。『兵士は起つ』という本の中では、多賀城自衛隊員のついてかなりのページが割かれています。これから訪ねて、感謝をさせていただきます」(一三年四月一一日)


YouTubeで〈小泉進次郎〉と検索すると出てくる動画の中で、最も人気が高いのは「陸上自衛隊高等工科学校五五期の卒業式 小泉進次郎氏の祝辞」(一二年三月一二日 横須賀市)である。公開日は「二〇一二年三月一三日」とあり、一年の間に閲覧回数は二一万回を超えた。


同校は横須賀市内にあり、陸上自衛隊の技術訓練校として中学卒業者を受け入れている。その卒業式での進次郎氏のスピーチが「感動コンテンツ」としてネット上で話題になり、ツイッターなどで「拡散」された。


「最後に一言申し上げたいのは、自衛隊に入る道を選ばなかった五名のみなさんに対してです。この五名の使命は大きい。多くの国民は高等工科学校の存在を知りません。みなさんの歳でこれだけの厳しい訓練を乗り越えて社会に出る存在を知りません。本校で学んだことを、同期が自衛隊で頑張る姿を、出会うみなさんに伝えてください。自衛隊の道をこれからも進む多くの方、そうではない方、両方とも大きな意義があると思います」