第1266冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール [単行本] ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・イェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール


フィードバックをまず活用し、あとで考える


ローラとの事前打ち合わせで、デービッドは直感的には正しくないが、じつは正しい練習をした――ローラのフィードバックを、深く考えたり話し合ったりするまえに使ったのだ。ローラのフィードバックに対して、たとえばこういう反応もできた。「あの、スーザンはすぐかっとなるたちなので、それほどあからさまには言えないと思います」。しかしデイビッドは最初に戻って、フィードバックを試してみた。したがって、そのあとの議論には、フィードバックされたアイデアに対する感想だけでなく、実行してうまくいったかどうかという観察も加えることができた。これがこの章の2番目のルールだ。まずフィードバックを活用し、そのあとで考える。フィードバックがあると、その時点で議論が始まってしまい、議論は行動を締め出しがちだ。そこでできるもっとも生産的なことは、フィードバックについてじっくり考えたい参加者に、こんなふうに言うことだ。「オーケイ、それは正しいかもしれない。でもまずやってみて、どうなるか見てみましょう」。


たとえば、同僚のマルタとあなたが翌週から部下のキャロルの業績評価をすることになっていて、ふたりでその練習をしている。あなたはキャロルにする話を練習している。まずキャロルの長所を2、3あげて、それから改善すべきおもな点についてふたつ話す。話し終えるとマルタが言う。「褒め方がちょっとぶっきらぼうかもね。まるでキャロルの気に入らない点の話に早く移りたいみたい。たとえば、もう少し細かく褒めてみるとか? キャロルがチームに貢献した具体的なことをつけ加えれば、もっと気持ちが伝わると思う」。


ここでよくあるのは、この意見を聞いて自分とキャロルとの関係をあれこれ考えてしまうことだ。「ありがとう。よくやってしまうの。キャロルには本当に感謝しているけど、あまり具体的に褒めてなくて」。あるいは、もっと大きなマネジメントの問題について考えてしまうかもしれない。「そうなの、そのことにいつも悩まされてる。まずは肯定的なことを言って、それから否定的なことを言わなくちゃいけないのはわかっているけど、本音はいちばん大事なことだけを話したい。いつも肯定的をふたつ、否定的をふたつなんて、決まりきった感じがして」。こうしたやりとりは興味深いし、おそらく役にも立つが、「練習を続ける」ほうがもっと役に立つ。私たちは、練習の参加者が練習を避けたいために、無意識に(あるいは、あえて)考えこんだり会話に夢中になったりする姿を何度となく見てきた。


この場合、マルタのフィードバックを取り入れて練習を再度おこない、そのあと結果をじっくり考えることが多い(そもそも直感的に納得できるものなら、自分で思いついている)。だから、試すまえにフィードバックについて考えるのは早すぎるのだ。重要なのは、試してみた結果である。


要約すると、一般的な練習はこういう流れでおこなうべきだ。

  1. 練習
  2. フィードバック
  3. やり直す(フィードバックを使って再度練習
  4. 場合により、何度かやり直す
  5. 考える


しかし、多くの人は次のように練習しがちである。

  1. 練習
  2. フィードバック
  3. 考え、議論する
  4. 場合により、くり返す


フィードバックあとにどんな議論もおこなってはいけないと言っているのではない。練習を続けるより、議論のほうが大事な場合もある。しかし、疑ってかかることが必要だ。すぐさま議論することは、練習を避けるための戦略になりうる。じっくり考える時間はあとでいくらでもあるが、全員で練習する時間は、何者にも代えがたい貴重な時間なのだ。


ワークショップのあいだ、私たちはよく部屋のなかを巡回する。通常、練習の参加者は8人ずつのグループになり、それが20ほどできるので、おのおのの異なったペースで練習していることが多い。巡回しているとたいてい話しこんでいるグループを見かける。彼らはよくこんなふうにして私たちを巻きこむ。「ちょうどいま話してたんですが、こんなときあなただったらどうします?」こうした会話は非常に貴重だ――あとで話せば、だが。「考える」ことは最後にした。そこで私たちは声をかけられたとに、できるだけ「次は誰の番?」と答えるようにしている。要するに、フィードバックで形作られる練習を何度かくり返して、情報を増やしたうえで考える方が、実り多いということだ。だから練習し、フィードバックをもらい、取り入れる。そのあとフィードバックにどんな効果があったか考えよう。