第1241冊目 美人の正体 外見的魅力をめぐる心理学 [単行本(ソフトカバー)] 越智 啓太 (著)
- 作者: 越智啓太
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2013/08/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「美人=性格が良い」論
ウォルターははじめ多くの実験で、恋愛のおいて外見的魅力の効果が大きいということがわかってきました。では、なぜこのようなことが生じるのでしょうか。社会心理学ではその答えとして、まず美人・ハンサムステレオタイプというものの存在に注目しました。これは、外見的に魅力のある人は、性格的にも能力的にも優れていると考えてしまう傾向のことです。
この問題を明らかにした研究を一つ示してみましょう。ミルズとアロンソン(1965)の研究です。この研究はそもそも、魅力的な人は魅力的でない人に比べて他人に対して説得力があるかを調べたものでしたが、実験の中で、魅力的な人とそうでない人の印象が調べられています。実験では一人の女性をサクラにしてその女性の印象を実験参加者に尋ねられました。半分の実験参加者には、この女性をメークアップして美人にした状態で見せ、残りの半分の実験参加者には、逆にメークダウンしてあまり魅力のない女性にした状態で見せました。
実験の結果、メークアップで魅力的になった女性は魅力的でない状態に比べて、「やさしく」「好感が持て」「陽気で」「落ち着いていて「チャーミングで」「ファッショナブルで」「きちんとしていて」「ロマンチックで」ある認知されることがわかりました。もちろん、魅力のある人のほうが、人を説得する影響力を持っているということもわかりました。
美人・ハンサムの好印象は長続きする
このようにファーストインプレッションの効果はきわめて強力です。なぜこのようなことが生じるのかといえば、我々の心の中には「初めに形成された印象はできるだけ変えないようにしよう」というバイアスが存在しているからだと考えられています。そのため、A君が友好的だという印象が一度生じてしまった場合、もし、A君が友好的な行動をすれば「ああやっぱりA君は友好的なんだ」と自分のファーストインプレッションを強化する方向に考えますが、A君が逆に非友好的な行動をした場合には「あれ? やっぱりA君は友好的じゃないのかな」と思ってファーストインプレッションを修正するというようりは「A君は、いまは友好的でない行動をとったけど、それはたまたま気分が悪かったからなんだ」とか「そういう行動をとるような状況に置かれたらやむをえずしたんだ」と考えることによって、もとの印象を変えないようにしているのではないかと考えられています。
そうすると、外見の良い人と接した場合、最初に形成されたときめきと「この人は良い人である」というファーストインプレッションも、外見のあまり良くない人と接した場合に最初に形成された「この人はあまり良い人でないかもしれない」という印象も、その後の対人相互作用を通してもなかなか変わらないということになるのです。