第1210冊目  接待の一流 おもてなしは技術です (光文社新書) [新書] 田崎 真也 (著)


接待の一流  おもてなしは技術です (光文社新書)

接待の一流 おもてなしは技術です (光文社新書)

  • 勝手に注文しないで


「お酒が飲めない男性と付き合ったことがあります。私が結構飲めるのを知っているのに、デートのときに、彼が勝手に全部料理をオーダーして、最後に『ウーロン茶二つ!』って。そういわれたときは、本当に頭にきた。その瞬間、絶対にこの人とは別れようと思いました。彼に一緒に飲むことを強要しないから、せめて自由にさせてほしかった」


同じ料理を食べることで、話題が生まれ、共感し合える


のっけから強烈なエピソードが登場しました。これでは女性たちが実に気の毒です。大事なプライベートの時間にこういう扱いを受けたら、怒るのは当然でしょう。一緒に食事をする意味がありませんから。


ディズニーランドや遊園地に行って楽しいのは、いっしょに乗り物に乗ったり、同じアトラクションを体験したりして、感動や興奮を共有するからです。


動物園に行って楽しいのは、象が鼻を上げたとか、ライオンが吠えたとか、同じものを見たり、聞いたりするからです。ドライブや旅行もまったく同様です。


デートで、男性だけが行ってきたエッフェル塔の写真をたくさん見せられても、女性にとっては面白くもなんともない。一緒にエッフェル塔に上ったという共有の体験があって初めて楽しいわけです。


楽しい時間をすごすということは、共感し合うことです。これは食事の時間も同様です。


食事で共感し合うのは、さほど難しいことではありません。もっとも簡単な方法は、二人が同じ料理を食べることです。共通の料理を味わうことが、楽しい会話のネタになり、共感し合える食卓になるでしょう。二人ともワイン好きであれば、ワインも会話のネタとなります。これは焼酎でも日本酒でも同様です。


このように、食卓では、料理とお酒そのものが共通の話題を提供してくれるわけですから、これを享受しない手はないでしょう。

  • まず相手の好みを確認する


どんな男性でも、デートの帰り際に女性から、「美味しかったわ」よりも「楽しかったわ」といわれたほうがうれしいはずです。「美味しかった」は、店の料理の味がよかったといっているだけであった、男性のもてなし術に対する褒め言葉ではないからです。


「楽しかったわ」といわれるためには、すべてのおいて、自分の好みよりも、女性の好みを優先したほうがいいでしょう。


日本人男性は、ともすると小さい頃からの習慣で、真っ先に「僕はこれが食べたいな」といいがちです。しかし、そういう〝ゲスト体質〟からはそろそろ脱却しましょう。あまりにも子どもっぽいからです。まず、女性に「何が食べたい?」と聞くべきです。それが大人の男性のもてなしだと思います。


女性の食べたいもの、飲みたいものを聞いて、店に注文します。


もしまったくお酒を飲めない男性であれば、自分はガス入りの水などを注文し、女性の好みを聞きながら店の人と相談して、美味しそうなワインを頼んであげればいいのです。


ワイングラスをおかわりしたり、ハーフボトルを頼んだり、自分が飲めないなり、方法はいろいろあります。

  • 同じものを同じタイミングで食べる


接待編で書いたことと重なりますが、料理は、女性と同じタイミングで同じものを食べるべきです。ワインを飲むならば、こうしたほうが料理とお酒の相性を楽しむこともできます。


フレンチで、メイン料理が女性は魚、男性は肉というのでは、同じワインで料理との相性を楽しむことはできません。また、同じメイン料理を食べたほうが、共通の話題が生まれ、会話がはずむはずです。


これはフレンチやイタリアンに限ったことではありません。回転寿司でも同じです。


回転寿司では、通常、それぞれが好きなネタをとって食べると思います。しかし、せっかく一皿に二カンずつ握りがのっているのですから、カップルで行ったなら、それぞれが一カンずつ食べてみてください。


こうすることで、五皿でお腹が一杯になる女性も、一〇種類のネタが食べられます。そのうえ、こういう会話も生まれます。


「このいわし美味しいわ」


「ほんとだ。新鮮だね。もう一皿、とろうか」


「うん、お願い」


食事を通して、こういうコミュニケーションを行うことが、僕はデートの基本だと思います。

  • 一回目のデートはフレンチより居酒屋で


居酒屋好きの男性であれば、一回目のデートは、自分が美味しいと思っている居酒屋にするべきです。


そのほうがいいおもてなしができるでしょうし、女性も男性の本質的な部分を知ることができ、デート本来の目的に適うと僕は思います。


「こういうの好き? ここの店は美味しいんだよ」と彼女の好みを聞きながら気遣い、あれとこれをちょうだいと店のおばちゃんに頼んで、リラックスした雰囲気で、一緒に楽しむほうがいいのではないかと思います。


実際に、こういう「証言」もあります。


「彼が常連さんになっている店にいくと、私も気分がいい。私の歓迎のされ方が違う。この人はここですごくいいお客さんなんだなと感じると、こちらもうれしくなります。


本人は常連のつもりでも、この人嫌われていると感じると、こっちも恥ずかしい。店の人の態度を見ればわかりますから」



最初に、居酒屋に連れていくことで、自分の日常を表現します。そして、お付き合いの流れのなかで、たとえば、彼女の誕生日にとっておきの準備をして、フレンチやイタリアンに誘うというお金の使い方をするほうが、賢いのではないでしょうか。


お金をかけた以上の雰囲気をつくるには、相手の好みを知ることが大切です。そういう準備なしに「楽しかったわ」といってはもらえません。


最初のデートでは、格好をつけない、無理をしないことが一番です。