第1176冊目 人の心をひらく技術 [単行本(ソフトカバー)]小松成美 (著)
- 作者: 小松成美
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/09/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分との対話「ブラックノート」ノススメ
ここで、私の秘密を一つお話ししましょう。この仕事について間もない頃から、私は「ブラックノート」と名付けたノートを持っています。黒革の手帳ではありませんが、人に見せない、見せられないという意味で、あえて黒い表紙のノートを買いました。
そこには自分の思いを隠すことなく、すべてを書きとめています。「原稿がうまくなりたい」「こんな仕事がしたい」「もっと痩せたい」という目標や願望から、「素晴らしい出会いだった」「今日会った人は苦手なタイプだ」とか「仕事で失敗してしまった」という感想と愚痴や反省まで、何でも書き記すのです。若い時代には、「嘘をついた○○さんは許せない!」と、泣きながらそのときの出来事を書いたこともありました。
ブラックノートは架空の友人のようなものです。私のことを何でも聞いてくれ、受け止めてくれる存在です。現代社会に生きる私たちは、たとえ「許せない」と思っても、おいそれとその関係を絶つわけにはいきません。孤島で一人生きていくならともかく、社会で生きていくとはそういうことだと思います。
もちろん、いよいよというときは、関係を断ち切ってもいいのではないかと思います。時bんを壊してまで守る関係などないでしょう。ただ、それは一生に何度もあることではないはずです。
どうにも気持ちのやり場がないけれども、なんとしても我慢しなくてはならないときには、私のようにブラックノートをご活用ください。
つまり、「自己内対話」をしてください、ということです。
ブラックノートに書いていると、「なぜあの人が許せないのか」「なぜ自分はこんなに孤独を感じているのか」「なぜコミュニケーションが下手なのか」といった、それぞれの問題点や疑問点がクリアになってきます。また、その細かな心理も分析できます。
私は、ブラックノートにさまざまな事柄を書き連ねてきました。人間関係を顧みたり、自分に怒ったり、落ち込んだりした気持ちを正直に書き、そんな駄目な自分を必死に鼓舞したりします。
また、「やらなければならないリスト」もそこに記、クリアした事案にはクリアマークをつけていました。たとえすべてクリアすることができなくても、事案をリストにするだけで自分の内面のバランスを保つことができました。
日記は毎日書くことが前提ですからプレッシャーにもなりますが、ブラックノートは書きたいときだけ書けばいいので気が楽です。そして、一年ごとに新しい黒表紙のノートに取り換えていました。
私は過去に書きつづったそれらのブラックノートを今でも大切に持っていて、ときどき見返すことがあります。笑ってしまうこともあるし、青臭い自分が恥ずかしいと思うこともありますが、あらためて気づかされたこともあるのです。
自分への反省や、懸命な自分の姿を懐かしく思うことで、自分にとって何が大切なのか、どんな価値観を持って生きているのかを、あらためて考えるのです。
ブラックノートはある意味で、「孤高ノススメ」でもあります。孤独な環境では自己内対話が進みます。大勢の人に囲まれて楽しいときを過ごしている間には、じつは、自己内対話を進めることができません。
孤独の中で自分に向き合ったこと、自分と対話したことは、よりよいコミュニケーションを作っていくために絶対に必要です。
自己内対話をしていない人が誰かの話を聞こうとするとき、不用意に相手を傷つけたりすることがあります。1stステップ、2stステップで記した相手への思いやりや、相手を受け入れる胆力が培われないからです。
孤独を知り、自分を見つめることができる人は、やはり優しい。
対話は、双方向の連続運動ですから、一方が変わればおのずと変わります。今、自分が変化すれば必ず変化するのです。その変化を深い対話を導き出す原動力とするために、あなたから変わることを意識してください。
そのためには、今の自分を見つめること、自己内対話はとても大事だと思います。ぜひ、自分と語りあう機会になるブラックノートをおすすめしたいと思います。
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