第1138冊目  (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫) [文庫]三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)


一瞬の一〇〇%よりも、常に二〇%の笑顔がプロの証


ANAに入社して間のないころのことです。


新入社員訓練の一環として、他部署の方の話をうかがう機会がありました。オイルまみれのつなぎを着た整備士、靴底をすり減らして歩きつづける営業マンなど、とにかくいろいろな職種の方の話を聞きました。


その中には胸が熱くなる感動の話もあれば、反対に悔し涙の話は、はたまた思わず笑ってしまうようなおもしろい話があり、あらゆる角度からチームがつくられていることを意識できる素晴らしい時間でした。


講演が終わり休憩時間になったときのことです。


前方で営業職の方が同期数人と楽しげに雑談をしていました。一番前の席に座っていた私は何気なくその話を聞いていたのですが、正直、興味のある話ではありませんでした。連日の訓練の疲れもあったため、ポーッと気の抜けた顔、つまらなそうな顔をしていたのだと思います。


すると、教官に名前を呼ばれました。ハッとして立ち上がると、「休憩中も勤務時間中です。人前で仏頂面をするものではありません」と、お叱りを受けました。思わず顔が赤くなり、とても恥ずかしかったのを覚えています。


たしかに、講演者の話は熱心に目を輝かせてメモを取りながら聞いていましたが、休憩に入ったとたん「休憩中だから関係ない。気を抜いてもいい」と思い、憮然として顔をしていたのだと思います。表情まで意識を行き渡らせいませんでした。


「あななたちは見られる仕事、どんなときも自分の顔に責任を持ちなさい」


静かで穏やかな物言いでしたが、胸にグサりと刺さりました。


そのときから私はたとえ関心がなくても、疲れていても、人の前では目を輝かせてはつらつとして、ほんの少しでも絶えず笑顔を心がけるようにしています。そのおかげで「いつも表情が優しく、穏やかですね」と好感を持っていただき、ご縁をちょうだいすることが増えてきたように思います。


あなたは人前で、うっかりつまらない顔をしていませんか。


自分の表情をどれだけの人が意識しているでしょう。たとえ自分に関心がない話題でも、理不尽なことで上司に怒られたとしても、やっとも思いで取れた契約が破棄されたとしても、プロである移乗、人前でつまらない顔を見せないことが大切です。


つまらない顔を見た人は一気にテンションが下がります。不愉快な気持ちになるものです。そうなると当然、その場の空気を悪くします。


「常に一〇〇%の笑顔を!」とまでは申しません。男性でも女性でも相手に好感を抱かせる口角(唇の両脇の部分)が少し上がった親しみやすい表情、二〇%の笑顔を心がけてみましょう。


自分の顔、表情をコントロールするのも大人のマナーです。


表情の豊かさは比例するも。私は、人の器量は表情で決まるのだと思っています。


美しさというのは顔の細部のつくりではありません。どんなに造形が美しくても、表情が下品だったり、貧相だと美しく感じないはずです。逆に、細部のつくりはよくなくても、表情が優しく豊かであると、その人から醸し出されるイメージがよくなります。


不思議なものですが、古くから言うじゃありませんか、「笑う門には福来たる」と。