第1219冊目  本当に言いたいことが伝わる技術 [単行本]箱田忠明 (著)


本当に言いたいことが伝わる技術

本当に言いたいことが伝わる技術


人は「見た目」で判断する


これまで、主に、上手な自己主張のやり方を、言葉の面で見てきましたが、実は、言葉と同じくらい、「見た目」でアサーティブネスを表現することも重要です。


有名な「メラビアンの法則」を発見したアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが行った実験では、人が、ものや人に対する好悪を判断しているのは、視覚情報によるものが55%で、言語情報によるものは7%しかないという結果になりました。


これは、ある特定の状況下における数値で、必ずしも視覚情報ばかりをいつも偏重しているわけではありませんが、「見た目」が重要な判断基準となっているのは確かです。


若い方はご存じないかもしれませんが、俳優の竹中直人さんは若いときに、「笑いながら怒る人」という芸で一世を風靡してことがあります。


これは、言葉はとても攻撃的でありながら、見た目はヒラヒラ笑っているという演技をすることで、見た目と言葉のギャップのおかしさを表現したものです。言葉は辛辣なのに顔が笑っているのでちっとも怖くないのです。


実際に、鬼のような憤怒の形相で「ありがとう」と言われても誰もうれしくないでしょうし、腕組みをしながら「ごめんさない」と言っても誰も許してくれないでしょう。


言葉と態度を合わせることは、とても重要なのです。



具体的に、見て目や態度によるアサーティブネスの表し方は、「してよニッコリ」」です。


これは、


し=視線
て=手振り、ジェスチャー
よ=よい姿勢
ニッコリ=笑顔


を縮めたものです。


1.視線 相手をしっかり見て、視線をフラフラさせない。相手に関心を向けていることを目線でアピールする。


2.手振り、ジェスチャー 自分の主張を、言葉で言うだけでなく、身ぶり、手ぶりを重ねることで強調します。


たとえば、「たった一つだけ」と言うときは、人差し指を相手に向けて立て、「広がります」と言ったときには、両手を広げるジェスチャーなどをすることで、より情熱が相手に伝わります。


3.よい姿勢 言葉は丁寧でもソファーに踏ん反り返っていたら素直に受け取られません。逆に、前かがみの姿勢では、自信がなさげで、安心して仕事を任せられないでしょう。


自信を持った態度、熱意、誠実さを表すには、ビシッと背筋を伸ばした正しい姿勢を保つことです。


4.笑顔 笑顔は理屈抜きで相手に好印象を与えます。とくに、ニコニコとした明るい笑顔は、心の余裕、自信や誠実さを強調し、主張の説得性を高めます。



この四つの中で、相手との物理的な距離が遠い場合に、手ぶり・ジェスチャーが有効です。


言葉が届きにくいぶん、視覚から入ってくる情報がよりイメージに大きく作用しますし、全身が見えるだけにボディランゲージもより大きくはっきり見せる必要があるからです。


これは、とくに、講演やセミナーで壇上から複数の聴衆に語りかける際に使えるテクニックです。


実際、演説のうまい人というのは、ジェスチャーを効果的に使っています。


たとえば、演説上手として知られた、元アメリカ大統領のジョン・F・ケネディは、演説の強調したい部分では、右手を広げて空手チョップのように上下に激しく振る動作をとりいれていました。


これは、「ケネディチョップ」という呼び名がつくほど、お得意のポーズとして定着していたので、アメリカ市民がケネディの演説を聞いているときに、「ケネディチョップ」をしていれば、「ここが大事なポイントなんだ」とわかるわけです。


このような、言語によるコミュニケーション手法を、「ノンバーバル小丹生にケーション」を言います。


自己主張を展開するときには、言葉のコミュニケーションである「バーバルコミュニケーション」に加えて、「ノンバーバルコミュニケーション」を効果的に使うことで、互いに主張を強調し合うことができるのです。