第1212冊目 本当に言いたいことが伝わる技術 [単行本]箱田忠明 (著)
- 作者: 箱田忠明
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2013/04/12
- メディア: 単行本
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短文でたたみかける
説得力のある話し方というと、流れるような名文を、淀みなく語るような口調を想像していたら、大きく違います。
たとえば、昭和時代の政治家で、消費税の導入に尽力した竹下登氏は、とても滑舌がよくて聞きやすいしゃべり方の半面、やたらに言い回しが多く、くどくどしたまわりくどい口調から、「言語明瞭意味不明」と揶揄されたものです。
あまりに一つひとつの話のセンテンスが長いので、結局何を言いたいのかさっぱりわからず、消費税の必要性は国民にまったく伝わりません。このときは、自民党の数の力でなんとか消費税導入にこぎつけましたが、竹下首相は国民に嫌われその後の参院選では野党に大敗しています。
いくら聞き取りやすい話し方でも、だらだらと長話をされたら飽きてくるものですし、何となく言い訳がましくなります。
反面、決してうまい言い回しでなくても、短い言葉で簡潔明瞭に言い切ることで、自信を感じさせるのです。
竹下元首相とは正反対に、実績はあまりないのに人気があったのが小泉純一郎元首相です。
一言居士と称され、「米百俵」「自民党をぶっ壊す」など、ワンフレーズポリティカルが得意だった小泉氏は国民の圧倒的な人気を受けて、景気後退やスキャンダルの発覚でがたがただった自民党を立てなおしました。
その小泉元首相の特徴的なしゃべり方は、大相撲名古屋場所で、当時の優勝者であった貴乃花関に対する讃辞によく表されています。
「痛みに耐えてよくがんばった。感動した。おめでとう」
特別にうまいことは言っていないのに、短文でたたみかけるように表現したこのフレーズは、いまでも人々の記憶に残っているはずです。