第1210冊目  空気をこわさず上司を説得し、プライドを傷つけず部下を動かす方法 :図解 デール・カーネギーに学ぶ会話術 [単行本(ソフトカバー)]松本 幸夫 (著)


空気をこわさず上司を説得し、プライドを傷つけず部下を動かす方法 :図解 デール・カーネギーに学ぶ会話術

空気をこわさず上司を説得し、プライドを傷つけず部下を動かす方法 :図解 デール・カーネギーに学ぶ会話術


カーネギー流から自分流へ


能をはじめとする芸事、あるいは武道の世界には、「守」・「破」・「離」という言葉が存在する。これは、入門したばかりの全くの素人が習得すべき「基礎のスキル」から、芸の極み、修業の極みにいたる「最難関のスキル」までを、3つのプロセスに段階分けしたものだ。


私も学んだことのある空手では、「立ち方3年」とか「握り3年」というように、技を身につける上での基本、ベースとなる段階がどうしても必要だ。


イチローの打法でも、ダルビッシュの投法でも、石川遼にしても、いきなり「自分流」を始めたわけではない。言うまでもないことだが、どんな天才も名人も初めは初心者である。


基本の段階はとにかく、師、先人、コーチの「言う通りの基本」を、身につける必要がある。古い時代の話になるが、世界的なホームランバッターとして知られた王貞治の「フラミンゴ打法」も、いきなり一本足で打ち始めたわけではない。まずはしっかりと基本を身につけなくてはならない。これが「守」の段階だ。


次の段階では、「基本をベースにした応用」が必要になってくる。すわなち「破」のプロセスへの移行だ。ただし応用と言っても、まだ、自己流のアレンジをこらし、新種の手法(テクニック)をあみ出すことが許されるレベルには及ばない。その手前――、あくまで習得済みのはずの、基本技術に則った上での「応用技の披露」ぐらいに考えてもらいたい。


野球のピッチャーならば、基本のストレートを十分に学び、捕手の要求する左右高低どのようなコースへの配球も、ほぼ「思うまま」に投げ込めるようになった者。つまり、自ら習得したくなるはずの、ごく一般的な変化球が、「破」のテーマである。


これを本書のページ構成に当てはめてみた場合、カーネギーの説くさまざまな教訓ないたエピソードが「守」である。それを土台にして、私が過去25年間に渡り、延べ20万人という数の研修受講者を指導してきた経験則を踏まえ、導き出した独自の「how to」こそが、応用プロセスの「破」に当たる。


ちなみに「破」のスキルを身につけた皆さんは、きっと会話術に関しては「誰にも負けない」という自負を持たれることだろう。ぜひスキルが錆びつかぬうちに、皆さんの所属している企業や団体の中で、堂々と「応用技の披露」を行っていただきたい。