第1209冊目 PRESIDENT (プレジデント) 2012年 10/1号 [雑誌] [雑誌]


PRESIDENT (プレジデント) 2012年 10/1号 [雑誌]

PRESIDENT (プレジデント) 2012年 10/1号 [雑誌]


顔の変化


顔の表情の基本は大きく七つに分けることができる。すなわち、「驚き」「笑い」「恐れ」「嫌悪」「軽蔑」「怒り」「悲しみ」の七つである。実際には、これらが少しずつ交じることで多様な表情がつくられる。面白いことに、この七つの表情の典型的な写真を見せて、「この表情は何の表情か」と質問してみると、かなりの数の日本人が「恐怖」「怒り」「軽蔑」「嫌悪」の四つを他の表情を取り違えてしまう。日本人はあからさまなこれらの表情を目にする機会が、比較的少ないからである。


たとえば、典型的な「怒り」の表情では、まず眉が引き寄せられて眉間に皺ができる。上瞼が持ち上がって黒目が大きく見え、さらに唇は左右に引っ張られ、特に上唇がブレスされて赤い部分が見えなくなる。ところが、日本人の場合は、怒りを目だけで表現する場合が多いのだ。上瞼をクっと引き上げて、眼光鋭く相手を睨んでいたら、たとえ眉間に皺が予定なくても怒っている場合が多い。


また、スクイントといって目を細めるのも、「怒り」あるいは「反発」の表情のひとつ。会議中、あなたが発言するのを目を細めて聞いてる人がいたら、あなたに反発を感じている可能性が高い。


「軽蔑」も日本人には見分けにくい表情のひとつだ。「軽蔑」の特徴は右か左、どちらか一方の口角を耳の方向にわずかに引いてプレスすることである。つまり、相手を軽蔑しているとき、人間の顔は左右が非対称になるわけだ。


たとえば上司であるあなたが部下へ、こう質問したとしよう。


「うちに梱包材を納入しているのは、A商事だったかな」


「いえ、B商事ですよ課長」


部下がこのように丁寧に答えてくれた後で、一方の唇を一瞬でもキュっと引いたら、部下はあなたのことを「課長のくせにそんなことも知らねぇのかよ」と心中で軽蔑していると考えていい。


ただし、こうした表情はきわめて微かにしか表れないのが普通だ。相手の本心を知りたければ、この「微表情」を見逃さないために相手の表情の変化に全神経を集中する必要がある。


ただし、あまりにも集中して人の表情を観察していると、「因縁をつけている」と誤解されることがあるから、くれぐれも注意しよう。実際、私は訓練のつもりで人の顔を凝視していて、唾を吐きかけられたことが何度かある。


さて、表情についてもうひとつお話しておきたいことがある。もしいま、全種類のお札を持っていたら、それを縦一列に並べてみてほしい。人物の顔の左側が目につくよういデザインされているのがわかるだろう。理由は、人間の情感は顔の左側により豊かに表れるからだ。左半面の表情を活写しようと思ったら、人物のお札に右側に配置してほうが都合がいい。


ご存じのとおり、感情を司るのは右脳であり、右脳の影響は身体の左側に出る。だから左半面は表情が豊かなのである。したがって、意中の人に告白するときは、カウンター席ならば相手の右側に陣取って、左半面の表情を見せるとよい。巧まずして、自分の素直な感情を相手に伝えることができる。


一方、右半面は理性的な冷たい印象を相手に与えるから、別れたい相手の場合は左側に座るほうが得策だと言えるかもしれない。