第1200冊目  プレゼンテーションの教科書 [単行本]脇山 真治 (著), 日経デザイン (編集)


プレゼンテーションの教科書

プレゼンテーションの教科書


ジェスチャー・身振り


プレゼンターのことばを視覚的に補完する身体動作としてジェスチャー・身振りがある。これはスピーチと連動しており、メッセージの意味をよりわかりやすく伝えるための身体動作で、プレゼンターへの注目度をあげ、説得力を増し、聞き手の理解を助長するための動作である。プレゼンテーションにおける身振りは次の二つの点で理解したい。


一つはプレゼンターがどの程度意識的に、あるいは意図して身振りを使っているかという点である。たとえば「これはきっといける」というと拳をにぎって一振りすると、「確信」が身振りによって視覚化されメッセージを強調する。拳は一般的には多義的で、ジャンケンの石(グー)であり、高く突きあげると歓喜や決起の意味をもつ。それを強い確信の表現としてつかうとき、演出や表現の技術が伴わなければならない。


もう一つは、ジェスチャーの意味がどの程度正確に聞き手に伝わっているかということである。「週末は久しぶりにこれを楽しみました」というときに、右手を軽くにぎって体の前で手首を外に打ち出すように動かす。この身振りが「ゴルフ」を意味していると、どれほどの人にわかるだろうか。ゴルフと全く縁のな人には何を意味した身振りなのか理解できないだろう。意図して使うと同時にそれが聞き手に正しく伝わるのか冷静に考えてほしい。ジェスチャーは話の弾みや勢いで出ることもある。プレゼンターの個人的なクセや仲間内の限定的なジェスチャーを不用意に使うことは避けねばならない。


ジェスチャーの基本はプレゼンターのことばとリンクしている点だ。細かなテクニックはほかの専門書に譲るが、ここではことばの強調、方向や所在の指示、現実感の表象などのための意図的な演出ととらえたい。