第1194冊目  プレゼンテーションの教科書 増補版 [単行本(ソフトカバー)] 脇山 真治 (著), 日経デザイン (編集)


プレゼンテーションの教科書 増補版

プレゼンテーションの教科書 増補版


国会の代表質問


近ごろの国会での論戦、特に各委員会での審議でテレビ中継がひるときは、各党の代表質問者はテレビ映りを意識した演出を心がけている。かつては代表質問に「演出」など無用だと思われていたかもしれないが、テレビが介在し視聴者の目が直接注がれるようになると、テレビ対策のための「細工」が不可欠になってきた。会議場の制約からカメラの位置は2、3カ所程度だが、単なる取材と異なり、中継中はすべての動作やことばが編集による短縮や削除などの操作を加えられることなくそのまま視聴者に伝えられる。


代表質問者は否応なくテレビを意識せざるをえない。テレビカメラの前を有効に「活用」するための手立てとして、フリップボード(質問に関連した解説のためのパネルなど)を用意することにあなる。質問や確認、あるいは質問者の考えなどを箇条書きにしたり、チャート図やグラフにしたり、口頭の質問とパネルとの相乗によりメッセージ性や説得力を高めている。


注意すべきはテレビの画面比が、4:4あるいは16:9であるということだ。これを最大限に生かすには、ボードを横位置にするのが望ましい。しかし解説内容の都合上どうしても縦位置にレイアウトせざるをえない場合もある。テレビ画面でボード全体を映しこむと、どうしても文字が小さくなりテレビ映りには不利である。しかしテレビ局は左右をいっぱいにボードを映して、カメラを上下にティルトしながら詳細をみせるといったことでカバーしている。


さてプレゼンター(代表質問者)はカメラ目線というわけにもいかないので、首相をはじめ官僚にアイコンタクトをとる。ときに手元資料にちらりと見て、ボードをアシスタント(同僚議員)に支えてもらいながら質問を行うスタイルが定着してきた。


しかしときとして、質問者自身が片手にボードをもちながら、ある種の力強さや存在感を示しながら熱弁をふるうといった行動もみられる。これは質問者としての全体的な印象の強さはあるものの、ボードがぶれる、水平が保持されない、カメラに正対しないなどの技術的な問題を残すことになり、いわゆる「テレビ映り」の側面からすると必ずしも望ましいとはいえない。


これは質問者の向かう意識が、質問相手の官僚とカメラの向こうの聴視者との二つに分散されることによる弊害である、アシスタントにボードをもってもらい、ボードの下を机につけて動きを極力抑える工夫をすることで解決ができる。テレビカメラの動きや操作まで予測することは困難なので、意図的にボードをもって主張や質問を強調する以外は、質問者自身がどう映っているか、ほかの委員会のテレビ放映を参考にしたり、ビデオで確認したり、テレビを通した自分自身の「みえ方」を想定しておくとよい。ただしあらかじめカメラ位置を知っておかないと、質問者の姿がボードに隠れてしまうことがある。