第1180冊目  話し方にもっと自信がつく100の法則 [単行本(ソフトカバー)] 太田 龍樹 (著)


話し方にもっと自信がつく100の法則

話し方にもっと自信がつく100の法則


量は質を凌賀する


石の上にも三年――。辛抱すればかならず報われるという意味のことわざとして、あまりにも有名です。


ミスター落語こと古今亭志ん朝さんは、若いころ父親である古今亭志ん生さんに次にように言われたそうです。


「おやじ(志ん生)がね、僕の若いとき……、遊びに夢中になってあんまり稽古しなかったときに、なんでもいいから3年だけ稽古しろって……。3年間、他のこと忘れて稽古しろ、そうりゃあ、あとはどうにかなるんだって言うんです。3年なんてすぐ経つっていうけど、3年……。できませんねえ(なかなか)……」(『落語研究会 古今亭志ん朝全集 上』TBS)。


3年の期間、1日平均10時間をなにかに集中する時間に費やした場合、合計で1万950時間(約1万時間)になります。


分子生物学者の福岡伸一さんは、『日本経済新聞』(2008年8月21日付夕刊)のコラム「あすへの話題」で、次のように述べています。


「プロフェッショナルたちの多くは皆、ある特殊な時間を共有しているのである。10000時間。いずれの世界でも彼ら彼女らは、幼少時を起点として少なくとも10000時間、例外なくそのことだけに集中し専心したたゆまぬ努力をしているのだ」


これらのエピソードには、ポイントが2点あります。


まず、長い時間をかけて、なにかひとつのことを続けるには、その対象のことを心から好きになり、それをしていることに喜びを感じられなければなりません。


次に、多くのプロフェッショナルは、「量が質に転化する」という体験をしているということです。1万時間の「質」が良いかどうかは大切なことですが、圧倒的な「量」が、はじめは低かったかれもしれない質そのものを磨いていったと考えられます。


話し方やコミュニケーションについても、「量」がものをいう面があります。さまざまな日々の経験や試行錯誤は、かならず質の向上につながるはずです。