第1138冊目  小泉進次郎の話す力 [単行本(ソフトカバー)]佐藤綾子 (著)


小泉進次郎の話す力

小泉進次郎の話す力


ダイナミックなアーム使いは遠目まで引く


二〇〇一年から二〇〇二年、私たちはどれだけ頻繁に小泉首相の「腕」のすごさを見たことでしょうか。この場合の「腕」は、文字通り体の「上腕(アーム)」のことです。


多くの政治家が演説をする時に、マイクを持っていないほうの片方の手を胸のあたりまで上げて、その腕を振りながら力強さを演出するアームの動き(言語補助動作)を出すことは技術として心得ています。適切なアームの振りはパワフルさ、元気さ、熱意を伝えていきます。


最近では、民主党代表選における管直人氏が、両方のアームの肘を机につけたまま、なんとかかろうじてアームを振る動作を数回していました。これでは肘が机についているので、せっかく振ってもちっともパワーが伝わりません。


管首相は、いつもアームの使い方がたいへん下手です。アームをガンと上から振り下ろし、ナタで切りつけるな動作も、よくやっています。私が何度もテレビ番組のなかで指摘しても直りません。下ろしたその腕を再びすぐに上に上げないので、押しつけがましい印象を与えてしまいます。


小泉純一郎氏の場合のアームは、肩よりも肘を高く上げ、その肘の先をガンと一旦下に振り下ろし、もう一度振り上げるというダイナミックな動きをいつも見せていました。


この上手なアームの動かし方は、小泉首相の演説行動の一つのパターンとなっていました。そのせいもあって、彼の話は見ていても面白く、テレビも年中高視聴率を記録し、内閣支持率においても、終始、戦後最高の驚異的支持率を維持したのでした。


小泉氏は、その主張の強さゆえに「ナチズム」と呼ばれたことがあります。ところでナチズムのヒトラーは、「聴衆は女である」という有名な言葉を残し、演説の際の自分の手の振り方、体の向き、顔と光の関係など事細かに気を遣っていたことでも知られています。


ヒトラーの演説画像を観ると、腕の動きはたしかに、聴衆を興奮の渦に巻き込む大きな役割を果たしていることがわかります。上にアームを振り上げる際に、きっぱいrとして迷いがありません。


「私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力だ」と言う時、小泉氏は必ずマイクを持っていないほうの手をバンと振り上げ、アームの先の手のひらを軽く開き、それでバンバンという手の振りに合わせて、少しだけ前に乗り出すのです。


そのたびにライオンヘアはふさふさと揺れ、全体が動いているという印象を与えて、人々の注目を集めました。このアームの使い方が、現在のオバマ大統領と同じく、非常にうまいのです。


アーム使いがうまい人は、表情の観察ができないほど遠くにいる人から見ても注目を引きますから、演説をよく聞かせるという効果を持っています。しかし、一般読者がこのアーム使いを意識し過ぎると、必要な回数を超えて「ノイズ」になってしまい演説やスピーチの妨害になりますから、皆さんはご自分の姿を一度ビデオに録ってみて、どこでどのくらいアームの動きを入れるかの研究をすることをおすすめします。