第1099冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫) [文庫]ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)


上手な講演者は、ほとんどの場合、迫力をこめた手の動きを利用する。コミュニケーション能力を高める手の動きを身につけた例としてふさわしい人物に、残念ながら、アドルフ・ヒトラーがいる。第一次大戦中は一等兵で、グリーティングカードの絵を描いて生計を立て、身長も低かったヒトラーには、才能豊かな信頼できる雄弁家に備わっているはずの資質や、人前での押しの強さはなかった。ヒトラーは鏡の前に立ち、独力で演説の練習を始めた。後には手の動きを練習している様子を映像に収め、劇的な演説スタイルに磨きをかけていったという。その後はよくご存じの通り。邪悪なひとりの人間が、雄弁の技を用いることにより、第三帝国のリーダーとして名をなすことに成功した。ヒトラーが手の動きを練習している映像が記録に残されている。それらの映像は、手をうまく利用して聴衆を魅了し支配していった、演説者としてのヒトラーの上達ぶりを証明するものだ。


人間は、効果的な手の動きには好意的に反応する。家や職場で、また友人に対して、話に説得力をもたせたいと思うなら、手の動きで表現力を豊かにしよう。中には効果的な手のコミュニケーションを自然にできる人がいて、それは考えたり教えられたりしなくてもできる才能だ。そしてその才能に恵まれなかった人には、集中的な努力とトレーニングが必要となる。自然に手をうまく使って話せるかどうかは別としても、手を動員すれば、思っていることをより効果的に伝えられることは覚えておきたい。